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【書評】

平成経済 衰退の本質 金子勝(まさる)著

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◆自民党政策の失敗を突く

[評]中沢孝夫(福井県立大名誉教授)

 平成の三十年を「政策の失敗」の歴史として捉えた“怒りの本”である。著者の指摘は金融政策、財政政策をはじめとして広範に及んでいる。ただ、基本的には自民党の政策がいかに(不作為の罪を含め)間違っていたかを記録、主張したものである。

 例えば著者は、バブル崩壊以降の長期にわたった金融危機について大幅に頁(ページ)を割いている。たしかに宮沢政治、そして小泉・竹中ラインによる政策は、金融秩序の再生と安定の基本である不良債権処理を遅らせ、政策はジグザグと不透明さに満ちていた。それは本書が主張するとおり、平成経済の「衰退」の大きな原因の一つであるし、新自由主義的政策の失敗ということもあるかもしれない。

 ただ、本書が強く批判している安倍政治に関しては、必ずしもその視線は公平ではない。直近ではたしかに景気に陰りがあるが、近年(過去六年)で見れば、就業者数が劇的に増加し、失業率が下がり、倒産件数も下がる、という肯定すべき現象もあった。そのことについては、著者は関心を持たないようだ。

 また著者は、北海道拓殖銀行や山一證券(しょうけん)などの経営破綻について、「経営者も監督官庁も責任が問われることはなかった」と主張しているが、拓銀の最後の頭取は特別背任罪で二年六月の実刑判決を受けて服役し、山一の元社長二人も証券取引法違反などの罪で有罪判決を受けている。旧大蔵省も財金分離により、財務省と金融庁に分割されている。責任の大きさに対するペナルティーが充分であるか不十分かは別として、著者の主張は事実と異なる。

 また著者は、安倍政権を「衆愚政治である」と断定しているが、評者には日本の有権者への公平な評価とは思えない。

 政治は結果責任の世界であるが、学者や批評家、ジャーナリズムもまた“発言の責任”は問われると思う。製造業に製造物責任があるように、表現者にも安全圏からの発言などはないということを改めて考えさせられる。評者にとっても、自戒の一冊である。

(岩波新書・886円)

1952年生まれ。経済学者。著書『新・反グローバリズム』など。

◆もう1冊

保阪正康著『平成史』(平凡社新書)。平成の30年を総括し、その意味を読む。

 

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