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【書評】

僕が夫に出会うまで 七崎良輔(ななさき・りょうすけ)著

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◆同性愛者の苦悩包み隠さず

[評]白石秀太(書評家)

 二〇一六年十月、東京・築地本願寺で宗派史上初めて同性同士の結婚式を挙げ、今年四月、江戸川区の「同性パートナーシップ」証明制度第一号となった男性による自伝的エッセイだ。恋愛にかかわる体験談を中心に、性的指向を受け入れるまでの葛藤や、同性愛者であるために被った差別や偏見が語られている。

 青春時代に描かれるのは、自分は何者なのかという苦悩の日々だ。中学時代の初恋以来、恋愛感情を抱く相手はごく自然に同性だったが、子供のころから<男なのに女っぽい>ために<オカマ>と呼ばれ、いじめに遭っていた。それ以上につらかったのは、周囲と違う自分を理解できず、嫌悪していたことだった。

 本書を書く数年前、中学時代の友人女性が性同一性障害だったことを知らされる。しかも「彼女」は、著者が自分を異性愛者だと信じ込もうとして交際したことのある相手だった。そんなことも起きるほどに「性的少数派」と呼ばれる人は実は身近な存在なのだ。著者と同世代の私が小学生のころ、誰かを<オカマ>と呼ぶからかいが確かにあった。共有できない苦しみを抱えた友だちが、きっと近くにいたのだ。

 カミングアウトをしたのは二十歳のとき。待っていたのは同性愛者が日本社会で生きる困難の数々だった。とくに盗難被害に遭ったときの警察の対応には、私も怒りを感じずにはいられなかった。事件がゲイの集まりで起こったと知ると、彼らを侮辱して、盗難届を拒否したのだ。一方で自身の失敗も包み隠さず披露している。男性同士の初めての性交渉についてのエピソードや直接的な表現もある。具体的な経験を伝えることこそが同じ境遇で悩む人たちや家族、友人にとって意味のある道しるべになる−著者のそんな思いが伝わってくる。

 同性間の婚姻制度が異性間と平等になることを望む著者は今、あらゆるカップルが結婚式を挙げられるようウエディングプランニング会社を設立。婚姻と同等の義務や権利を契約できる公正証書作成の支援なども行っている。

(文芸春秋・1404円)

1987年生まれ。2016年「Juerias LGBT Wedding」設立。

◆もう1冊 

ReBit監修『「ふつう」ってなんだ?−LGBTについて知る本』(学研プラス)

 

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