東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【書評】

日本の地方議会 辻陽(あきら)著

写真

◆わかりにくい実態 丁寧に説く

[評]中村健(早稲田大マニフェスト研究所事務局長)

 早稲田大学マニフェスト研究所が実施している調査によると「地方議会や地方議員に対して住民が持っているイメージ」は、調査を開始して以来「何をやっているのかわからない」と回答する比率が毎年、最も高い。

 しかし、地方議会が何もやっていないのではなく、二〇〇〇年の地方分権一括法の施行後、改革派首長の影響や人口減少によって目覚め、〇七年の北海道夕張市の財政破綻は地方自治体に自己責任の意識を強く与え、議会活動が大きく変わるきっかけとなった。

 夕張市に隣接する栗山町(くりやまちょう)の議会が日本で初めて議会活動の背骨とも言われる「議会基本条例」を制定してからは、全国の地方議会が自身の権能について考え、その機能を整え始めた。また「まちづくりは首長機関の仕事」と思いこんできた議会が地方自治の制度(二元代表制)を意識し、住民との意見交換をはじめるなど、平成の大合併以前の議会とは比べものにならないほど活動を活発化している。

 しかしながら、住民からの評価は前述のとおりであり、議会は「意見交換会を開催すればするほど参加者が減っていく」と嘆き、住民からは「議員定数や議員報酬の削減」を突き付けられ、選挙時には立候補者が定数に満たない状況(なり手不足)が多発している。

 本書は、地方議会が制度上どのような役割を与えられ、議会や議員が日常どのような活動をしているのかについて大規模自治体と小規模自治体とに分けて丁寧に記している。また、議員活動と報酬というカネの問題や選挙の実態という生々しい裏側にも言及している。

 約十年前に我が国の地方議会は自身の権能に気が付き、活動を改めてきた。これまでの議会改革は議会内の制度を整えてきた活動が中心であったが、いよいよこれからは「住民から期待される議会」を目指した実質的な活動が求められる。本書は、これからの議会改革の方向性について最後に言及している。

(中公新書・946円)

1977年生まれ。近畿大教授。著書『戦後日本地方政治史論』など。

◆もう1冊 

曽我謙悟著『日本の地方政府−1700自治体の実態と課題』(中公新書)

 

この記事を印刷する

PR情報