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【書評】

スノーデン独白 消せない記録 エドワード・スノーデン著

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◆命懸けの告発 正統性説く

[評]内田誠(ジャーナリスト)

 人は、自らの行いがあまりに罪深きものであることを知ってしまったとき、吐き気を催すものらしい。

 一九九五年、英国の名門、ベアリングズ銀行のトレーダーだったニック・リーソンは、相場急落で巨額の損失隠しがもはや不可能になったと分かったとき、シンガポール国際金融取引所のトイレに駆け込んで嘔吐(おうと)した。

 二〇一三年、米国の国家安全保障局(NSA)に勤務していたエドワード・スノーデンも、監視対象となっていたインドネシア人学者のパソコン操作を盗み見ているうち、パソコンのカメラの視界に入ってきた学者の息子らしき赤ん坊と一瞬目が合ったように感じた直後、耐えられなくなり、トイレに駆け込んで嘔吐したと、本書の中で述懐している。

 ただ、リーソンが単に逮捕を恐れて逃亡しようとしていただけだったのに対し、スノーデンは、米国諜報(ちょうほう)機関がひそかに違法な大量監視を行っている証拠を、命懸けで世界に「開示」しようと既に決意していた。

 スノーデンは、米中央情報局(CIA)やNSAで連邦政府の情報収集活動に携わり、同年六月、米国政府による違法な情報収集の証拠を持ち出し、ジャーナリストたちの手に委ねた。この行動によって、米国政府が世界中で大規模なプライバシー侵害を行っていたことが白日の下にさらされた。

 読者は、著者がパソコンに夢中になっていた少年時代から、諜報業界での活動を経て国外に脱出し、「政府の悪行」の証拠を「開示」するまでの旅路を追体験することになる。告発はなぜ行われたのか。その経緯と理由が全編を通じて明らかにされている。

 著者は自分が奉仕を誓ったのは「ある機関に対してではなく、政府に対してですらなく、国民に対して」であるとして、告発の正当性に加え、独立戦争時の内部告発の伝統に連なる正統性をも主張する。訳文は決して読みやすくはないが、かえって正確な表現に心を砕く著者の情熱が伝わってくるようだ。

(山形浩生(ひろお)訳、河出書房新社・2090円)

CIA職員、NSA契約業者として働き、米政府の大量監視システムを暴露。

◆もう1冊

グレッグ・ミッチェル著『ウィキリークスの時代』(岩波書店)

 

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