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【千葉】

失敗の不安 やっつけよう ゲーム感覚で“攻略法”松戸の小学校が試み 

アドバイスを受けながら、「勇者の旅」と題したワークブックに記入する小学6年の児童=松戸市立矢切小学校で(画像の一部を加工しています)

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 うつ病や不安障害などの治療で使われる認知行動療法という心理療法を活用し、小中学生がゲーム感覚で不安の“攻略法”を学ぶ試みが学校で広がっている。「友達に嫌われているかも」「テストで失敗したらどうしよう」といった日常的な不安に対処する力を、楽しみながら身に付けられる。不登校やいじめを防ぐ効果も期待されている。

 「実験をしましょう。ピンクの象を思い浮かべてください」。十一月上旬、松戸市立矢切小学校で菊地祐人教諭(29)が六年生約六十人に呼び掛けた。数分後、一転して「一切考えないようにしてください」と指示。子どもたちは目をつぶって頭の中から象を追い払おうとしたが、「出てきちゃうよー」とぼやく子も。菊地教諭が「考えないようにするのが大変だった人?」と聞くと、一斉に手が挙がった。

授業で使用した「勇者の旅」ワークブックのページ(千葉大子どものこころの発達教育研究センター作成)

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 「考えないようにすればするほど余計に考えてしまう」という、不安に陥るときの思考の癖に気付くのが狙いだ。次の授業では認知行動療法の手法を活用。「リコーダーのテストに失敗したら笑われる」という事例を取り上げ、「たくさん練習した」「失敗してもクラス全員に笑われるわけではない」など不安への反論を考え、不安にどう向き合うかを学んだ。

 授業は、千葉大子どものこころの発達教育研究センター(千葉市)が作ったプログラムに基づき実施。ロールプレーイングゲーム風の「勇者の旅」と題した約百ページのワークブックを使う。勇者となった子どもたちが全十回の授業で「自分の気持ちの伝え方」「リラックスする方法」などを学び、勇者城を目指す。

 矢切小は二〇一八年度に導入。浅岡裕子校長(59)は「児童が『みんなに悪口を言われている』と思い込んだとき、『それは本当?』と頭の中で別の自分が問い掛けられるようになってきた」と効果を説明する。千葉、埼玉、京都、鳥取、福岡五府県の小中学校で導入された。西日本豪雨で被災した岡山県の学校からも問い合わせがあり、関心が広がっている。

 不安は誰でも経験するが、過剰になると「学校へ行くのが怖い」など生活に悪影響が出ることも。文部科学省の一七年度の調査では、不登校の小中学生約十四万人のうち、「不安の傾向がある」と分類された子どもは33・2%で、「無気力」や「学校での人間関係に課題」を上回り最多だった。

 プログラム考案に携わった千葉大の浦尾悠子特任助教は「不安が膨らんで困ったとき、心の病気になる前に自分で対処できるようになる」と強調。不登校を減らすほか、友達の気持ちも理解できるようになることでいじめも防げるとみている。

<認知行動療法> 自分を追い詰める考え方の偏りや行動パターンを、カウンセリングなどで修正する心理療法。うつ病や不安障害、摂食障害、薬物依存症の治療以外に、休職者の復職支援や性犯罪者の更生プログラムにも用いられている。欧米で先進的に取り入れられているが、うつ病治療などで薬物療法が主流の日本では実施している機関は少ない。

 

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