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【千葉】

我孫子の暮らしつづる 杉村楚人冠の随筆「湖畔吟」市教委、現代表記で復刊

昔の我孫子で、どのような生活が営まれてきたかを記した随筆「湖畔吟」の復刻版

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 明治後半から昭和初期にかけて活躍したジャーナリスト杉村楚人冠(そじんかん)(1872〜1945年)が、我孫子で暮らした日々をつづった随筆集「湖畔吟」を、市教育委員会が現代表記版で復刊した。手賀沼のほとりで、昔の人々がどのように生活していたかが、簡潔な文体で描かれている。 (堀場達)

 湖畔吟は「アサヒグラフ」(朝日新聞社)の連載を中心に、楚人冠が文芸春秋などの媒体に執筆した作品を加えた随筆集。楚人冠の文章が七十二編、友人で、国民新聞を創刊した思想家の徳富蘇峰(一八六三〜一九五七年)、ポツダム宣言受諾に尽力した政治家の下村宏(一八七五〜一九五七年)が一編ずつを寄せている。

 復刊本では市杉村楚人冠記念館学芸員の高木大祐さん(41)らが、仮名や漢字を現代表記に改め、あまり使われなくなった用語や言い回しなどには注解を付けた。

 楚人冠は一九二四(大正十三)年、我孫子へ移り住んできたのを機に連載を始め、随筆集の冒頭に自宅の建築トラブルをユーモラスに記した「ごたごたの趣味」を収録した。七十二編のほとんどは、手賀沼や地元の風俗、東京への通勤模様について、口語体で書かれている。

 高木さんがお薦めの一編は、二七(昭和二)年十二月発表の「醤油(しょうゆ)買い」。我孫子からおよそ八キロ離れた現在の茨城県取手市へ、十人ほどの主婦が誘い合わせて向かい、しょうゆを購入するエピソードだ。三、四時間も歩く買い物道中を「丸(まる)で遊山(ゆさん)にでも出るような心持(こころもち)で」楽しんでいる女性たちの様子が文章から伝わり、高木さんは「当時の生活色がよく出ている」と話す。

 平将門伝説に言及した「桔梗の花」(二四年八月)、農村部ですら見かけることがまれになった「古池のかいぼり」(同)、我孫子が豊かな食材の産地だったことをうかがわせる「松露とり」(二六年五月)「沼のうなぎ」(同年十月)なども興味深い。

 楚人冠のアサヒグラフ連載随筆は「続湖畔吟」「続々湖畔吟」を併せ、計三冊が単行本化され、市教委は残る二冊についても、現代表記版を復刊する予定という。

 湖畔吟の現代表記版は百四十八ページで、一冊六百円。同記念館や白樺文学館、市役所の行政情報資料室などで購入できる。問い合わせは、同記念館=電04(7182)8578=へ。

 

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