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【千葉】

「桃太郎」の鬼は悪くない 袖ケ浦の小6・倉持さんが本出版

童話「桃太郎」の真相に迫り、本を出版する倉持よつばさん=袖ケ浦市立奈良輪小学校で

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 童話「桃太郎」に出てくる鬼は悪くない−。袖ケ浦市立奈良輪小学校六年の倉持よつばさん(12)が、これまでの自由研究をもとに九月下旬、初の著書「桃太郎は盗人なのか? 〜『桃太郎』から考える鬼の正体〜」(新日本出版社、本体価格千五百円)を刊行する。「まさか本になるとは思わなかったので、すごくうれしい」と目を輝かせる。 (山田雄一郎)

 奈良輪小では毎年、「図書館を使った調べる学習コンクール」(図書館振興財団主催)に、児童たちが応募するよう支援。倉持さんは二〇一七年度のコンクールで、妹のひまりさん(8つ)と高速道路の現状を調べ、姉妹で優秀賞・NHK賞を受賞。副賞として贈られた絵本「空からのぞいた桃太郎」(影山徹、岩崎書店)の帯に「鬼だから殺してもいい?」と書いてあることに驚きを覚えた。福沢諭吉が「(宝物を奪った)桃太郎は盗人だ」と批判していたことも知り、「鬼ケ島の鬼は悪者なのか」と疑問を持ち、調べてみた。

 まず、二〇一八年五月、地元の市立中央図書館で十八冊の桃太郎本を読み比べた。桃太郎を盗人としていたのは二冊だった。これだけで結論を出すのはどうかと思い、別の小学校で教師を務める母親の優子さん(41)に相談。優子さんの友人の紹介で、桃太郎の蔵書が多い岐阜県図書館(岐阜市)を夏休みに訪問し、七十四冊を読み比べたが、ここでも「桃太郎盗人説」は少数派だった。

 その後も読み比べを続け、計二百冊以上を読んで気がついたのは、桃太郎の話が時代によって異なること。特に、鬼については(1)江戸〜明治初期は、鬼から宝物を奪っている(2)明治末ごろから、鬼がみずから宝を差し出すようになっている(3)昭和になると優しい鬼が出てくる−と時代とともに非力になっていく様子を発見。鬼に落ち度はなく、「桃太郎盗人説」に共感を覚えた。同時に得体(えたい)の知れないものを「鬼」とすることで、日本人は昔から心の安定を図ってきたという結論にたどりついた。

 これらの調査結果を、図や写真を交え、昨年度のコンクールに応募、小学生の部(高学年)で最高賞の文部科学大臣賞に輝いた。受賞コメントで、倉持さんは「怖いと思っていた鬼への疑問は、全部本の中にあった。本が好きになった」と語った。

 出版に当たって、作家の椎名誠さんが「民俗学者を含む、多くの大人たちが思いもよらなかった『人と鬼』の巨大な謎の解明にちかづいた」と推薦している。

 倉持さんは「今は鬼というと悪いイメージがあるが、昔の話だと宝物を奪いに行ったのは桃太郎。鬼自身は何も悪いことはしていない。そこを知ってほしい」と元気に語る。

 

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