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【千葉】

<東京2020 夢舞台ともに>(5)最高のおもてなしを 館山市のホテル支配人・内林慎二さん(48)

米国のトライアスロンチームから贈られたラッシュガードを手にする内林慎二さん=館山市藤原のホテル「千里の風」で

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 「やったるぞ、と思いましたね」

 茶褐色の外壁が印象的なホテル「千里の風」(館山市藤原)の支配人、内林慎二さん(48)は、そう振り返る。東京五輪・パラリンピックで、米国トライアスロンチームが事前キャンプの宿泊先として千里の風を選んでくれたと知った時のことだ。

 米国チームが館山市に接触してきたのは昨年一月。大会組織委員会のキャンプガイドや日本のコーチから評判を聞きつけた。水泳、自転車、長距離走の三種目からなるトライアスロンのキャンプには、美しい海が広がり、海岸沿いに長く延びる「房総フラワーライン」を抱えた館山はうってつけの環境。毎年六月に「館山わかしおトライアスロン大会」(通称タテトラ)を開催してきた実績もある。

 米国チームから照会を受け、市側が推したのが千里の風。ホテルを視察したチーム関係者も太鼓判を押した。内林さんは「選手がリラックスできること、食事の環境を整えられること、屋外プールがあることが大きかった」とみる。

 最初のキャンプは昨年八月。東京でのテスト大会に出場するため、ホテルに到着した選手、コーチたちは、長旅に疲れた様子で、簡単な食事を済ませると「もう寝る」と言って客室に吸い込まれた。

 「どんなふうに接したものか」。旅行会社に勤務し、サイパンに十年間赴任するなど海外経験が豊富な内林さんもいささか不安を覚えた。が、彼らはタフでおおらかだった。翌朝からは元気な姿で従業員にも気さくに振る舞った。「細かい事は気にしなくて良い。自分たちでやるから」というのが彼らの姿勢だった。

 事前の打ち合わせ通り、ホテル内の一つの厨房(ちゅうぼう)と食事処(どころ)をチームに提供。チームの専属シェフが腕を振るい、好きな物を一日三食、口にしてもらった。食材の調達などはホテルが全面協力した。練習では、屋外プールに専用レーンを設け、他の宿泊客の邪魔にならないように配慮した。起伏のある場所で走りたいと要望があれば、近くのゴルフ場を紹介した。

 「すし屋はどこにあるのか」「花火に連れて行ってくれないか」「(冗談で)日本人の彼女がほしい」。気さくな選手と従業員の間には連帯感が芽生えた。「ありのまま、彼らを受け入れようと思うようになった」と内林さん。

 テスト大会では、男女混合リレーの三位が最高成績と、予想外の不振に終わったが、チームを束ねるジョン・ファラーさん(49)は「五輪本番で勝てばいい」。一週間ほどの滞在だったが、感謝の証しとして、米国チームから内林さんに、レースで着用するラッシュガードや帽子などがプレゼントされた。従業員の心配りに「Amazing!(素晴らしい)」との賛辞も寄せられた。

 内林さんは現在、ファラーさんたちとメールで、五輪本番へ向け打ち合わせを重ねている。テスト大会時、客室のWi−Fi環境があまり良くなかったが、既に全面改修を済ませた。

 「米国チームをケアしたことは、ホテルにとって将来の財産になる。館山のインバウンドビジネスのきっかけにもなれば」。夢見るは米国の金メダル。肩肘張らない、ごく自然な「おもてなし」を最高のエールにしたいと強く願う。 (山田雄一郎)

トレーニングでホテルを出発する米国チームの選手ら=昨年8月、内林さん提供

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