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【千葉】

<東京2020 夢舞台ともに>(7) 成田空港のユニバーサルデザイン手がける・山田浩介さん(36)

「他空港に先行してユニバーサルデザインを根付かせておきたい」と話す山田浩介さん=成田空港で

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 「国際空港は国籍、言語、人種、文化的背景など多様な人々が交差する場。成田空港で障害者への対応が十分でなかったのは本来おかしいこと。ユニバーサルデザイン(UD)は避けて通れない課題でした」

 東京五輪・パラリンピックでは、大勢の利用者が見込まれる成田空港。近年、UDに向けた動きが加速している。運営する成田国際空港会社(NAA)の営業企画推進室アシスタントマネージャー山田浩介さん(36)=成田市=は、誰もが使いやすい空港を目指すUDの実務を担当することになった時の状況を振り返る。

 学識経験者や多様な障害当事者、空港関連事業者らでつくる「成田空港UD推進委員会」が二〇一七年五月に設立されると、発達障害の分野に着目し、さまざまなアイテムを実現させた。学生時代に発達障害のある子たちと交流する機会が多く、「本人や家族の不安、困り事は肌感覚で分かる」という。

 山田さんらが考案したものの一つ、事前学習冊子「なりたくうこうから りょこうへいこう!」は、空港到着時から搭乗手続きや保安検査を経て飛行機に乗るまでの流れを、写真を中心に詳しく説明。各ターミナルの国際、国内線ごとに計六種類を作った。制服など細部の違いに直面して混乱する人への配慮だ。

 「すべて平仮名にしたら小学一、二年生の健常児でも読めて、子連れの家族がよく手に取ってくれている」と一九年五月の配布開始から多くの人に広がっている。こうした冊子を用意したのは国内の空港で初めてという。

 カームダウンルームは、一八年一月、国内の公共交通機関で初めて導入された。パニックや興奮状態を落ち着かせるための照明のない小部屋で、感覚過敏のある人にも必要とされている。「親と一緒に入りたい」との要望から、第三ターミナルでは室内にいす二脚を用意した。

 手助けしてほしいことなどを書いて首からぶら下げる「ヘルプストラップ」や、視覚的に単純化した絵記号を並べて指をさすことでやりとりできる保安検査担当者用の「コミュニケーション支援ボード」も実際に使われている。

 「発達障害は見た目だけでは分からないため、理解してもらえないと諦めている人が大勢います。成田空港の取り組みは希望になり、社会に与える影響も大きい」。委員会に携わってきた日本発達障害ネットワークの元事務局長で、当事者の親として育児を経験してきた橋口亜希子さん(48)はこう評価する。

 実際、一九年には世界の空港や航空会社に関する英国の格付け機関「SKYTRAX」から、移動に制約がある人にとって利用しやすい空港の部門で、羽田に次いで世界二位と評価された。山田さんは「業界ではミシュラン並みに執着している面があり、うれしい結果」と喜ぶ。

 「今のうちにUDを根付かせておきたい。施設が古くハード面の改修に時間を要するため、ソフト面に力を入れているが、成田が先行して他空港が追随すれば路線開拓の一助にもなる」。東京五輪・パラをきっかけにして、これからも新しい空港の姿を提案し続ける。(小沢伸介)

発達障害がある人のために開発され、成田空港で使われている冊子など

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