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【社説】

著作権法改正 現場の声をよく聞いて

 インターネット上にある海賊版の漫画などのダウンロードを禁止する著作権法改正案が迷走している。漫画家らから懸念の声が上がり、自民党総務会は先週末、了承を見送った。再検討すべきだ。

 改正案作りは違法サイト「漫画村」(現在は閉鎖)に象徴される海賊版対策がきっかけだった。ただで新刊も読める違法サイトが野放しでは漫画家の収入が減り、新しい作品が生まれにくくなるという問題意識があった。出版社などが規制を求めていた。

 違法サイトの運営者は国内にいるが、違法データは海外のサーバーに置くのが一般的だ。海賊版の映画や音楽、本など有償の著作物をネットで公開するのは現在でも違法だが、運営者が簡単には分からないため、摘発は難しい。

 改正案は文化庁の文化審議会著作権分科会がまとめた。当初の案では、海賊版と知ってダウンロードすることも違法とし、刑事罰もある。動画と音楽はすでにダウンロードも違法で、改正案は対象を漫画や写真、論文などあらゆる有償のものに広げる。

 案が示されると、漫画家の竹宮恵子さんが会長を務める日本マンガ学会が反対声明を出した。インターネットを通じて記事や図版などを利用することが「違法」とされれば、研究や創作活動の萎縮を招く懸念が大きいとする。

 日本漫画家協会も対象を「原作のまま、まるごと複製する行為」などに限定するように求める声明を発表。十一日には日本建築学会が緊急会長声明を出すなど、見直しを求める意見が広がっている。

 出版社などでつくる出版広報センターは「海賊版対策には“特効薬”は存在しない。あらゆる手段を用いた総合的な対策が必要」と法改正に賛意を示す一方、「『表現の自由』こそ、マンガを含めた文化資産を生み出す最も重要な土壌」として対象の範囲については考慮を求めている。

 事業者も努力している。電子書店、電子書籍配信サービスのサイトで昨年十一月末、著作権者から使用許諾を得たことを示すABJマークの運用が始まった。

 著作権法は「著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的」(第一条)とする。同法は「私的使用」として、個人的な目的でコピーを取ることなどを認めている。

 健全な市場や利用法が著作権者と文化を守る。著作権分科会は漫画家ら関係者や利用者の意見を聞いて法案を練り直したらどうか。

 

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