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【社説】

タイ総選挙 混乱を避けほほえみを

 軍政トップの首相は続投濃厚、下院は伯仲−。開票途中ながら、総選挙後のタイ政治はこうなりそうな見込みだ。久しぶりの民政の船出は混沌(こんとん)としている。安定の中で改革を進めるのが肝要だ。

 四年以上続いた軍政を民政へ移管するための総選挙(定数五〇〇)に備え、大負けしないような仕組みを軍政側は施し、奏功した。

 タクシン元首相派と親軍政派が第一党を争う。タクシン派は、軍政が決めた不利な選挙制度もあって伸び悩んだ。過半数を取る政党はない見込みで、多数派工作が今後のカギになる。

 プラユット現首相が続投濃厚なのは、事実上軍政が選ぶ上院(定数二五〇)が親軍政派で占められそうだからだ。軍政は、下院にしかなかった首相指名の権限を「上下両院の合同会議」に変えた。親軍政派が有利になる。

 タイは時折政情不安に陥り「軍事クーデター→新憲法制定→総選挙」のパターンが繰り返された。国民に敬愛された故プミポン前国王の仲裁で軍政から民政に移ったこともある。王室が両者のバランスを取っていた側面も見られた。

 前国王が亡くなって以降は、王室の影響力低下が指摘される。今回は軍の暫定政権が二千日近く続いた。軍政が千日を超えたのは四十数年ぶり。政治活動が禁じられ表現の自由も制限されていた。

 こうした抑圧を批判し、反軍政を掲げたタクシン派には策におぼれた失敗も。王女を首相候補に立てたが、弟の現国王の反対で断念。同派政党の一つに解党命令が出され、多数の候補者を失った。

 親軍政派も必死。タクシン派を嫌う都市中間層らの支援を取り付ける一方で、東北部や北部の農村地帯の強い支持を得ていた同派の政策をまねて、低所得者らへの配分を広げる公約を掲げる作戦にも出た。

 軍部独裁の政権が終わり、与野党が対決する民主的な下院運営が戻ることは評価できる。しかし、政権は親軍政派中心になるとみられ、上院には軍政が事実上議員の顔触れを決められる非民主的な仕組みが厳然と残る。

 この国でも広がる生活格差の是正など課題は山積している。七万人を超す日本人が住み、わが国とのつながりは深い。タイは今年、東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国で国際社会の注目も大きい。開票の遅れや党派対立の過熱による国政の混乱を避け、この国の代名詞でもある「ほほえみ」を大切にしてほしい。

 

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