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【社説】

核燃料搬出開始 廃炉への道のりはるか

 東京電力福島第一原発3号機から使用済み核燃料を取り出す作業が始まった。廃炉への道のりは険しく遠い。あらためてつくづく思う。この国で大変なことが起きてしまった。起こしてしまったと。

 「一歩前進」、それは確かだ。しかし、あと何歩進めば、ゴールにたどり着けるのだろう。

 炉心溶融(メルトダウン)を起こした福島第一原発1〜3号機の原子炉建屋上部にある燃料プールには、それぞれ未使用と使用済みの核燃料が残されたままになっていて、強い放射線を出し続け、廃炉作業の大きな妨げになっている。

 3号機の燃料プールの中でも比較的安全な未使用の燃料を取り出すことから踏み出した“第一歩”。事故から八年、機器の不具合などがあり、予定より四年遅れで始まった。

 その取り出しが始まったということは、廃炉作業環境の地ならしが、ようやく端緒についたということにすぎない。

 作業はすべて遠隔操作。特殊な装置を使って核燃料を水中で輸送容器に納め、クレーンでつり上げて、近くの共用プールへ移す−。

 3号機のプールの中だけで五百六十六体の燃料が眠っている。一日数体ずつ移し、二〇二〇年度中に作業を終える工程だ。これだけでも大変な作業である。

 使用済み燃料の取り出し作業がたとえ順調に進んでも、燃料の最終処分先は決まっていない。その後には、核燃料が溶け落ちて固まった「燃料デブリ」が待ち受ける。それこそが“本命”だ。

 ことし二月、2号機の格納容器側面から投入されたロボットが、デブリとみられる堆積物に初めて触れて、一部持ち上げることに成功したことが、大ニュースとして喧伝(けんでん)された。

 上部からつり上げやすい位置にある使用済み核燃料すら、一基二年がかりの難作業。所在も形状も性質も不明に近い燃料デブリを果たして安全に取り出すことができるのか−。

 「一歩前進」を喜ぶよりも、ことの重大さを、あらためて思い知らされるのみである。

 安倍晋三首相は十四日、スーツ姿、マスクなしで事故現場を視察。東京五輪開催に向けて、作業の進展と安全性をアピールした。しかし、原発はいまだ本当の意味での「アンダーコントロール(管理下)」には遠く、この国が大変な困難を抱えたままだということを私たちは忘れるべきではない。

 

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