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【社説】

保育の無償化 子供たちが置き去りだ

 幼児教育・保育無償化の改正法案が国会で成立しそうだ。子育て支援に違いないが、その恩恵から外れる人が残る。何より「保育の質」確保に不安がある。このままでは子供たちにしわ寄せがいく。

 日本の社会保障の特徴は高齢者への給付が手厚いこと、それと低所得で困難を抱える層を主にその対象としていることだ。一方、中間層の現役世代は税や保険料を負担しているのに給付の実感が得にくくなっている。

 社会保障制度の将来は、それを支える現役世代がどう給付の手応えを感じられるかがカギと言っていい。

 政府の幼児教育・保育の無償化は、消費税率10%への引き上げで得られる増収分を使い、十月から子育て世代に広く保育サービスを無料かそれに近い形で提供する発想で政策の方向は理解できる。

 だが、無償化は安倍晋三首相が二〇一七年の衆院選で唐突に公約として打ち上げた。だから十分な制度設計の議論がないまま泥縄式に制度がつくられた。政策の狙いに内実が伴っていない。

 さらに言えば、虐待防止など他に財源が必要な子育て支援策に目配りしたのかも疑問だ。

 無償化の課題はまず、希望する認可保育所に入れない待機児童が依然、いることである。この子供たちはサービスの蚊帳の外だ。無償化は受けたい人全員が受けられる制度であることが前提である。待機児童解消が先だろう。

 認可施設に入れない人の多くは認可外施設を利用している。政府は当初、認可施設のみを対象と想定していたが、格差拡大への批判から認可外施設も対象とした。

 原則として、劣悪な施設を排除するための基準を満たすことを条件とした。しかし、制度施行から五年は基準を満たさなくても対象とする経過措置を設ける。

 政府はこの間に質の向上を求める考えだが、具体策は見えない。自治体が施設への立ち入り調査を担うが人員が足りない。仮に調査で課題が見つかっても改善させる実効性ある対応策に乏しい。

 質の確保には、保育士の待遇改善や配置を手厚くするなどの対策が不可欠だが、財源が十分に手当てされているとはとても言い難い。

 安倍政権は公約実現を優先し質を度外視して対象を広げた。無償化で利用者が増えれば逆に質の低下に拍車がかかりかねない。

 生煮えの政策に子供たちの安全や安心が脅かされていいはずはない。法案の見直しを求める。

 

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