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【社説】

景気悪化 雇用へは波及させまい

 多くの国民は経済の変調を感じていたはずだ。景気の基調判断がやはり「悪化」へと後退した。激化する米中の貿易摩擦の先行きが見通せない中、まずは雇用への波及阻止に全力を傾けるべきだ。

 内閣府が公表する景気動向指数が「悪化」となるのは六年二カ月ぶりだ。ただ街角の景況感を測る景気ウオッチャー調査は昨年十二月、すでに悪化を示していた。政府は一月の月例経済報告で景気拡大が「戦後最長になった」としたが、幻であるのは確実だ。

 悪化の最大の要因は、関税戦争の様相を帯びる米中対立である。この余波で、半導体や液晶関連装置など対中輸出が大幅に減り指数を引き下げた。

 日本は部品を中国に輸出。それらは中国内の工場で製品化され、中国製として米国に輸出される流れが出来上がっている。関税引き上げは、この日中米の貿易一路を根底から揺るがしている。すでに中国ビジネスを見直す企業が出始めている。

 対立は米中のマクロ経済にも打撃を与える。国際通貨基金(IMF)は、双方が輸入品すべてに25%の追加関税を課した場合、米国の国内総生産(GDP)を最大0・6%、中国のGDPを同1・5%減らすと警告する。両大国の経済不安が国内経営者の意識を萎縮(いしゅく)させるのは言うまでもない。

 ここで指摘したいのは雇用への影響だ。企業の採算悪化を止めるには人件費を削るのが手っ取り早い。この際、弱い立場にある非正規雇用者が標的になりやすい。

 下請け企業での雇い止めや一時自宅待機といった措置は、実態が分かりにくく静かに進行する。サービス残業増加といった労働時間の不当な延長も心配だ。政府・地方自治体を問わず公的機関は監視の目を光らせてほしい。同時に経営者の冷静な対応も期待したい。

 国内景気の悪化に対し、日銀による追加金融緩和を求める声もある。だがこれ以上の緩和は銀行経営のさらなる悪化など副作用が強すぎる。緩和余地はわずかで急激な円高といった緊急事態の応急措置として残すのが常道だ。

 六月、大阪で二十カ国・地域(G20)首脳会合が開かれる。ここでの米中会談が最大のヤマ場だろう。

 決裂すれば世界経済は、自国の富を最優先する三百年前の重商主義に逆流する恐れさえある。仕切り役の日本は、対立から融和への転換点となるよう周到かつ万全の準備をしなくてはならない。 

 

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