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【社説】

GDPプラス 体感景気は数字と違う

 プラス成長といわれてもピンとこない人は多いだろう。今年一〜三月期の国内総生産(GDP)が前期から伸びたという。だが国民が感じている景気の現状は、この数字とは大きく離れている。

 今回、実質GDPの半分以上を占める個人消費は前期比0・1%減だった。消費を手控える決定的な要因はなく、購買意欲が落ちたとしか説明できない。

 今年に入り食料品など日常に欠かせないモノの値段が相次いで上がる中、賃金が上がったという実感はない。多くの人々が、店先でより安い方を選んだり買う量を減らすなど、生活防衛に走った結果が数値に出たのではないか。

 にもかかわらず全体としてプラスになったのは、二つの数字上のからくりがあるからだ。

 二〇一八年度の補正予算が執行された。これにより公共投資が1・5%増加し数字を押し上げた。これは政府による経済の下支えであり、いわば官製景気だ。

 外需の伸びも大きく貢献した。しかし、これも輸入の減少が輸出減を大幅に上回り差し引いた額が大きく増えたからにすぎない。輸入減の原因は、消費が伸び悩み海外から買うモノが減ったことだ。

 ここで指摘したいのは、今回の数字が消費者の心理を的確に反映していない点だ。消費者は予定されている消費税増税と、米中経済摩擦による景気悪化不安を前に身をすくめているはずだ。スーパーなどで買い物する際「節約しよう」という気持ちに拍車がかかるのはむしろ自然な流れだ。

 特に米中摩擦は経営者の心理を冷やし、賃金や雇用の抑制につながる恐れがある。今回の調査では設備投資が減少しており、経営者の消極姿勢はすでに現実となっている。消費と賃金、雇用は経済の核心部でつながっており、その連鎖が負の方向に逆流する気配が漂い始めている。

 茂木敏充経済財政担当相は「内需の増加傾向は崩れていない」と発言したが納得できない。内需の減少懸念は山積している。

 今、政府に必要なのは生活目線で景気の現状を認識することに尽きる。景気後退はまず経済的弱者を直撃するからだ。

 不当な賃金不払いや雇用が増えていないか。値上げのしわ寄せが零細業者などに及んでいないか。政府は景気判断を机上ではじき出した数値だけではなく、暮らしの現実を丁寧に把握した「民の肉声」を入れて行うべきだ。

 

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