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【社説】

消えた留学生 制度のゆがみ正さねば

 大勢の留学生が所在不明となった東京福祉大に対し、国は厳しい指導に乗り出した。本来の趣旨を逸脱し、留学生は人手不足の業界で不可欠の労働力とされている。制度のゆがみを直視すべきだ。

 トイレのわきに机といすが並べられた雑居ビルの一室。文部科学省が公表した一枚の写真がこの大学の劣悪な教育環境を物語る。授業を受けていない学生もトイレを利用するために出入りしていた。

 同省の調査で所在不明者は三年間で千六百人超に上る。多くは正規課程への準備段階の研究生や留学生別科の学生だ。正規課程は大学設置基準に基づき定員が定められているが、研究生などには明確な上限はない。

 この制度上の抜け穴なども使って、大学が受け入れた留学生数は六年間で約十五倍の五千百人超に膨らんだ。キャンパスだけで学生を収容できず、雑居ビルやマンションなどが教室とされていた。

 名古屋市にある系列の専門学校も、収容定員の四倍を超える生徒が在籍している可能性がある。

 大学の新規の研究生の受け入れは当面停止される。国は新たな制度を設けて、他の大学にも在籍管理の徹底を求める。

 日本語教育に携わる関係者によると、二〇〇八年に国が「留学生三十万人計画」を打ち出して以降、日本での就労希望者が現地のブローカーのあっせんで、留学生として入ってくる事例が以前にも増して目立つという。留学生は週二十八時間のアルバイトが認められている。コンビニエンスストアなどでは留学生店員が日常の風景となっている。

 ブローカーに仲介料を払うため、借金を抱えている学生もいる。思ったほどにはアルバイトの収入が得られなかったり、学業との両立が困難だったりという現実が、留学生が「消える」背景にあることは想像に難くない。留学生数は目標として掲げた三十万人を達成しつつある。しかし数字ありきになっていた側面はなかったか。国は内実を検証すべきだ。

 留学生のアルバイトが解禁されたのは一九八三年。政府が留学生十万人計画を掲げた年だった。学業を持続可能にし、日本を深く知ることができるという意味では、アルバイトは一概に否定されるものではない。だが人手不足の問題は本来、労働政策の中で解決策を見いだすべきだ。学業に出稼ぎ目的が入り交じるグレーゾーンは解消する時期にきているのではないか。

 

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