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【社説】

G20サミット 格差の議論忘れずに

 大阪で開かれるG20サミットで米中貿易戦争の陰に追いやられた課題がある。自由貿易が広げた所得格差だ。トランプ大統領の保護主義の根にある格差を避けて貿易問題は解決できない。

 二十カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、自由貿易と保護主義の問題は初日の二十八日に議論される。

 追加関税で応酬する米中の貿易戦争は終息に向かうのか。世界の注目が集まる中で、その陰に隠れてしまっているのが所得格差、経済格差という重要な課題だ。

 そもそも自国第一主義、保護貿易のトランプ氏を米大統領に押し上げ、欧州の主要国でポピュリズムやナショナリズム台頭の背景になったのは、先進各国に広がった富の集中と中間層の崩壊という経済格差だった。

 特に二〇〇八年のリーマン・ショック後は、多くの首脳会議や国際通貨基金(IMF)など国際機関が「格差の拡大は経済成長を阻害し、政治を二極化して分断、対立を引き起こす」と懸念を繰り返し表明してきた。

 ところが対策は進んでいない。貿易摩擦が激しさを増す中で、二極化はむしろ拡大しているのではないか。例えば世界の貧困問題に取り組む団体オックスファムは、一七年に新たに生み出された富の82%を世界で最も豊かな1%が手にしたと分析している。

 今回のサミットで、格差の問題が正面から議論される気配はない。焦点のひとつは、前回の首脳宣言に盛り込めなかった「反保護主義」の文言の扱いにある。ただ反保護主義が、格差の議論や対応策抜きに自由貿易の推進に結び付けば、弱肉強食という自由貿易の負の部分を見失ってしまう。状況はむしろ悪化しかねない。

 保護主義にはグローバリズムや自由貿易に対する痛烈な批判が込められている。しっかりと受け止めなければ、より多くの人が利益を享受できる自由で無差別、公正な貿易体制を手にすることはできないだろう。

 今回テーマになる「デジタル課税」は国境を越えた新たな富の集中への対応策として重要だ。

 税制では最高税率の引き上げや累進課税の強化、福祉政策による所得の移転、労働者の権利保護など、首脳どうしが議論し手を付けるべき具体策は目の前にある。

 貿易戦争の激しさに目を奪われて、背後にある格差問題の重要性を忘れてはいけない。

 

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