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【社説】

ウイグル族抑圧 ムチは負の連鎖生む

 中国のウイグル族騒乱から十年となるが、政府はさらに強権統治を露骨にしている。民族の伝統や文化を重んじない抑圧は、このイスラム系少数民族の心を離反させ、暴動など負の連鎖を招くだけだ。

 二十カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれていた大阪で六月下旬、ウイグル族やチベット族などの少数民族が、中国の人権侵害に抗議する集会を開いた。

 米国に亡命しているウイグル人の人権活動家、ラビア・カーディル氏も来日し、中国政府が多くのウイグル人を「強制収容所」に入れていると指摘。「世界はなぜ沈黙しているのか」と述べ、国際社会が中国の少数民族弾圧にもっと目を向けるよう訴えた。

 確かに、中国のウイグル族抑圧は目に余る。二〇一七年以降、中国は「再教育センター」と呼ぶ施設を造り、ウイグル族など延べ百十万人を収容しているという。

 国際社会の批判に対し、中国政府は当初「完全な虚偽」と反論し、施設の存在すら否定していた。一八年秋に一転、「テロと戦い過激主義を防ぐ措置」として「センター」での「中国語、法律、職業、思想」教育などを認めた。

 「中国の内政」との理屈で、施設の存在を否定し、国際社会からの人権抑圧批判に耳を貸さないような態度は不誠実である。

 本紙の取材に、ウイグル族の男性は「施設では満足に食事も与えられないなど、非人道的な扱いを受けた」という同胞の体験を語った。中国は「再教育」をうたうが、その実態は分離独立運動やテロを警戒しての強制収容所に近いのではないか。

 中国が、特にウイグル族への抑圧を強めたきっかけは〇九年七月に新疆ウイグル自治区のウルムチで、漢族への反発をきっかけに起こった騒乱だった。中国は死者百九十七人と公表したが、ウイグル族側は死者三千人以上と主張し、真相は明らかではない。

 同自治区は石油、天然ガス、石炭の埋蔵量が中国全土の三割を占める資源の宝庫で、近年は習近平国家主席が主導する政策である「一帯一路」構想の拠点として重要性を増している。

 これまで、中国は財政支援と厳格管理という「アメとムチ」で新疆の安定化を図ってきた。

 最近は民族固有の伝統文化を軽視し、漢族に同化させようとする「ムチ」ばかりが目につく。名ばかりの「自治区」ならば、「反中」の機運は消えまい。

 

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