東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

かんぽ不正 ノルマ最優先を改めよ

 無保険状態や保険の二重契約は九万件を超えていた。かんぽの不正販売問題で、にわかに信じ難い事態が進行していた。甚だしい顧客軽視の姿勢であり、日本郵政はグループ全体で猛省すべきだ。

 新規の保険契約を結んだ後に旧契約を解除せず保険料を二重に徴収。新規契約の三カ月以上前に古い契約を解除し一時的に無保険にする。いずれも営業成績を上げるためにかんぽ生命保険が行った不正な販売手法だ。

 こうした手法が横行していることは以前から指摘されていた。しかし、かんぽ生命側は「法令には触れていない」との姿勢を崩さなかった。六月以降、報道による批判や顧客の不満が一気に高まり、かんぽ生命はようやく責任を認めた。この対応の遅れは、経営者の問題意識の欠如を裏付けているといっていいだろう。

 グループは持ち株会社の日本郵政と傘下のかんぽ生命、ゆうちょ銀行、日本郵便が構成する。このうち日本郵便は郵便物の取り扱い減少などで採算が苦しい。日本郵便はかんぽ生命とゆうちょ銀から委託された金融商品を販売して穴埋めをしていた。

 かんぽ生命は郵便を助ける意味でも収益力アップを目指した。つまりグループの収益構造がノルマ偏重の温床になった形だ。

 郵政事業の民営化は二〇〇七年に行われた。民間の活力で利便性の高いサービス展開が実現するはずだった。しかし、現状ではその期待は裏切られた。サービス向上どころか、民営化の是非を改めて問い直す事態にまで陥ったと指摘できるだろう。

 政府は日本郵政の株式の約57%を保有している。かんぽ生命が保険の販売営業をする際、政府が後ろ盾となった親会社の存在は間違いなく有利に働く。この状況下でさらに不正な販売を続けていたわけで、経営陣の責任は極めて重いといわざるを得ない。

 人々が生命保険に入る背景には、未来への不安が横たわっている。それ故、生保の販売には可能な限り顧客の立場に寄り添った姿勢が求められる。かつて生保業界全体が保険金の未払い問題などで厳しい批判を受けたのも、その姿勢が欠けていたからだ。

 今後、政府が保有する日本郵政の株式比率は減る。それに伴い経営の自由度は増す。その過程の中で、経営トップの進退も視野に入れたグループ内の抜本的な体制見直しを図らなければ、顧客からの信頼は取り戻せないはずだ。  

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報