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【社説】

「京アニ」惨事 奪われた才能を悼む

 「京都アニメーション(京アニ)」のスタジオが放火され、多数が亡くなる惨事が起きた。残忍な犯行に憤りを禁じ得ない。犠牲者の冥福を祈り、日本のアニメ文化が進化の歩みを止めないよう願う。

 許し難い事件である。京都府警に身柄を確保された男は、スタジオ一階の玄関で、バケツからガソリンのような液体をまき、火を付けたという。男は住所、職業不詳の四十一歳で、顔や胸などにやけどを負い、病院で治療中。回復し次第、府警は事情を聴くという。

 男は、確保の前後に「パクりやがって」「小説を盗んだから放火した」と話したとされる。動機が何であれ許せる道理はないが、今後事件の全容をきちんと語ってほしい。最低限の責任だ。

 京アニは一九八一年に下請けから出発して業界準大手に成長したアニメ制作会社。中高生らの日常などをみずみずしく描いた作品が多い。丁寧な作風が「京アニクオリティー」と評され、若い世代を中心に多くのファンを持つ。

 若手中心のアニメーターが多く働く。雇用の不安定さなど労働条件の悪さも指摘される業界だが、京アニのスタッフは正社員が大半で優れた人材が育っていたという。数多くの才能の持ち主が犠牲になり、日本アニメ文化の未来への影響を心配する声も聞かれる。

 事件は、国内外で大きな衝撃をもって迎えられた。あらためて同社や日本アニメの存在の大きさを印象づけた形だ。

 アニメ映画「君の名は。」の新海誠監督は、自分にできることとして「(表現することに)ひるまず、やめることをしないで、これからもアニメを作る」と述べた。ファンの中高生らもツイッターに多くの投稿を寄せている。

 反響は海外でも。ルモンド紙の電子版では十九日、この事件のニュースが「最も読まれた記事」になった。米国のアニメ配給会社がインターネットのクラウドファンディングで京アニ救援の募金を始めると、開始から一日以内で一億円以上が集まった。日本と国家間の関係は微妙な中国や韓国でも、ネット上では、犠牲者の冥福を祈り、京アニを励ますファンたちの書き込みが相次いでいる。

 孫の二十代女性が被害に遭った男性は「入社二年目だった。完成した映画(のエンドロール)に自分の名前が載って喜んでいた。一週間前のことだ」と涙ぐむ。こうした宝物のような人たちが理不尽に生を終えた。残念でならない。

 

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