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【社説】

カシミール緊張 インドは自治権を戻せ

 インドによるジャム・カシミール州の自治権の強引な剥奪で、カシミールの領有権をめぐり長年対立するパキスタンとの緊張が高まった。インドは早急に状況を元に戻し、緊張緩和に努めるべきだ。

 インドが実効支配するジャム・カシミール州は、ヒンズー教徒が八割を占める同国内の州で唯一、イスラム教徒が多数派。自治権剥奪は大統領令で突然発表され、憲法改正案の国会可決で確定した。

 今年の総選挙で大勝したモディ政権与党のインド人民党(BJP)は「ヒンズー至上主義」を掲げる。自治権剥奪で同州にヒンズー教徒が大量に流入する可能性もある。パキスタンのカーン首相は「民族浄化につながる」と批判。クレシ外相は国際司法裁判所への提訴方針を明らかにした。

 自治権剥奪は、住民に何の相談もないまま行われた。インドは反対する独立運動家らを大量に拘束。さらに、州内のインターネットや電話を遮断した。人口十三億のインドは「世界最大の民主主義国」とも呼ばれるが、一連の手法はとても民主的とはいえない。

 カシミール地方は、第二次大戦後の一九四七年、英国からインドとパキスタンが独立した際から両国が領有権で争い、数度にわたる印パ戦争の要因となった。近年は、イスラム過激派による分離独立運動が激化。モディ首相は「ジャム・カシミール州を(イスラム教徒の)テロから解放するため」と自治権剥奪の理由を述べた。

 インド政府は「これは内政問題だ」として、国際社会の介入を拒む。しかし、多方面で覇権を争う米国と中国は動きだした。

 印パと並び、カシミール地方の一部を実効支配する中国の王毅外相は、パキスタンと連携しインドに反対する立場を示した。米国のトランプ大統領は、印パ両国の首相と電話会談し「緊張緩和と自制」を促した。

 ジャム・カシミール州の住民たちは、宗教上の対立を緩衝させる「自治」という「知恵」を壊された。インドの政策は到底容認できない。印パはともに核保有国であり、対立が長引いて軍事的緊張につながってはならない。

 インドは、実効支配の強化に直結し、国際情勢に悪影響を及ぼす自治権剥奪を即時撤回すべきだ。国連の安全保障理事会は今回「印パ二国間で解決を」として声明を出さなかったが、そもそも安保理はカシミールを「中立地」と見なしてきており、インドに撤回を強く求める立場のはずだ。

 

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