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【社説】

デモ荒れる世界 市民の怒り受け止めよ

 世界各国の街頭で抗議行動が燃え盛っている。あおりでチリではアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が中止に追い込まれた。為政者は市民の怒りを真正面から受け止めるべきだ。

 中南米で指折りの富裕国であるチリ。経済・社会的に比較的安定していると評価されていた。半面、貧富の差の大きさは世界でも有数で、経済格差は教育や医療の機会格差にもつながる。

 政府が先月、地下鉄運賃の値上げを発表したことが引き金になり、こうした不公正に対する市民の積年の不満が爆発した。抗議デモは全土に波及。一部が暴徒化して放火、略奪に走った。

 政府は慌てて運賃値上げを撤回し、電気料金の値下げ、年金と医療制度改革など一連の格差是正と弱者救済策を打ち出したが、デモ収束の兆しは今も見えない。

 世界中でシュプレヒコールが鳴り響いている。香港をはじめ、選挙不正疑惑をめぐる混乱から大統領が亡命する事態に発展した南米のボリビア、新たな税負担に対する市民の猛反発で政権が退陣に追い込まれたレバノン、地方選で野党候補の立候補が排除されたことへの反プーチンデモのロシア。

 ほかにもエジプト、イラク、スーダンなどで抗議行動が起き、犠牲者が出ている国もある。

 一九九〇年代末から二〇〇〇年代初頭には、反グローバリゼーションの大きなうねりが起きた。

 その約三十年前の六〇年代後半には、米国のベトナム反戦運動、フランスの「五月革命」、日本の全共闘運動など学生主導の抗議運動が世界で巻き起こった。

 既成の体制や価値観に対する若者たちの反乱は、連鎖的で波及力を持っていた。音楽、ファッションといった文化にも大きな影響を与えた。

 これに対して今の抗議行動はより広範囲に多発し、抗議内容も多様だ。運動の中核になっているのはやはり若者だ。

 昔と違って動員手段にソーシャルメディアという有力な武器を持つ。ソーシャルメディアを通じて拡散した怒りがデモに発展する。

 異議申し立ての理由は各国さまざまだが、総じて格差、差別、腐敗、圧政といった社会的不公正への怒りである。社会が抱える矛盾が噴き出した格好だ。

 為政者は力で抗議行動を封じ込めるのではなく、それに向き合うべきだ。民意をないがしろにする政治は有害である。

 

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