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【社説】

米国の小型核 抑止どころか危険だ

 「核なき世界」を目指す動きに逆行している。米国防総省が、新開発の小型核弾頭を潜水艦に配備したと発表した。ロシアや中国への抑止力になるとするが、「使える核」が世界に広がりかねない。

 小型核弾頭はW76−2と呼ばれる。トランプ政権は、二〇一八年に発表した核体制の見直し(NPR)の中で開発を予告していた。

 爆発力が約百キロトンだった従来型の核兵器を改造し、五〜七キロトン程度に抑えたもので、弾道ミサイルに搭載されて原子力潜水艦から発射される。

 すでに実戦配備され、核の先制使用も辞さない構えだ。

 オバマ政権下で発表されたNPRは、核兵器削減を基本方針とし、新しい核保有国の出現とテロリスト集団による核兵器の入手の阻止に重点が置かれていた。

 ところがトランプ政権はこの方針を転換し、ロシアや中国、そして独自に核開発を進める北朝鮮を強く意識して、武力で対抗していく姿勢を打ち出した。小型核開発は、この流れに沿ったものだ。

 実戦配備について、国防総省の報道官は、「敵国による限定核攻撃が無意味であることを示し、抑止力を高める」と正当性を主張しているが、とても言葉通りに受け止めることはできない。

 小型核は、被害が限定されるため核使用のハードルが下がり、使いやすくなる。すでにロシアが保有しているとされ、米国が実戦配備したことで、核戦争の危険がいっそう現実味を帯びてきた。

 また原潜から発射されるミサイルは、外見だけでは小型核を搭載しているか判別できないため、相手国の過剰反応を起こしかねない、との懸念も出ている。

 今年は核兵器をめぐる節目の年だ。四月からは五年に一度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開かれる。〇三年に広島、長崎両市を含む平和市長会議(現・平和首長会議)理事会が「核廃絶の期限」と定めた年でもある。

 一七年に採択され、世界の注目を集めた核兵器禁止条約の批准国は三十五に増え、発効まであと十五カ国に迫っている。

 ところが米国は昨年、冷戦時代に核軍縮を大きく進展させた中距離核戦力(INF)廃棄条約を失効させるなど、非核化への努力を無視する行動を続けている。

 日本は、米国の核の傘に依存している。それでも、唯一の戦争被爆国として、米国に対して自制を求め、核兵器の削減に向けた努力を続けるよう促す責務がある。

 

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