東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

 未来が見える占い師がいた。ある日、水晶玉をのぞくと中に恐ろしい怪物の姿が見えた。怪物は火を吐きながら、この国に迫っている▼占い師は大急ぎで城に行き、王に怪物が映る水晶玉を見せた。「怪物がこちらに来ます。早く何とかしないと」。王様は水晶玉をのぞき込んだ。怪物の姿に「なるほど」とつぶやくと突然、水晶玉を床にたたきつけた。水晶玉は粉々に。「ほれ、もう怪物は消えたぞよ」▼新聞を読んでいて、こんな物語が頭に浮かんできた。老後資金をめぐる金融庁審議会の報告書の記事である。老後、夫婦が年金だけで生活しようとすれば月五万円の生活費が不足し、老後三十年として二千万円の蓄えが必要になる−▼二千万円。報告書という水晶玉が見せたその数字は、穏やかな老後を思い描いていた人にとって怪物に等しかろう▼さあ、どうするか。怪物の正体をきちんと説明し、退治の方法を議論すべきだろうが、政府が選んだのは「水晶玉」をたたき割る方だったようだ。麻生副総理兼金融担当相は誤解を招くとして報告書の受け取りを拒否する意向を表明した▼無論、それでは怪物は消えない。まだいる。政府与党は参院選を控え、不都合な怪物の存在を認めたくなかったのか。だが不正直で子どもじみたやり方を押し通せば、政府与党にとって恐ろしい選挙結果があの水晶玉に映らないとも限らぬ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報