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【コラム】

筆洗

 「津軽海峡・冬景色」「また逢(あ)う日まで」などの作詞家、阿久悠さんが作品を考える上で守ってきた「歌謡曲作法」の中に流行について書いている一項目がある▼「歌は時代とのキャッチボール。時代の中の隠れた飢餓に命中することが、ヒットではなかろうか」−。時代が飢え、求めるものに答えることができればヒットし流行する▼「新語・流行語大賞」の年間大賞。今年はラグビー・ワールドカップ(W杯)日本代表のスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」が選ばれた。日本代表の奮闘や大会の成功を思えば、今年は選びやすかったか▼人名などを除けば、英語で表記される大賞は今回が初めてかもしれぬ。日本代表といえば、日本生まれに限らず、さまざまな国の出身者で構成されていることが話題になったが、誰でも理解できる英語のスローガンというのも一つの時代を象徴しているのだろう▼阿久さんの作法通り、ヒットとは時代の飢餓に命中させるということなら、息の合った、「ONE TEAM」はどんな日本の「飢餓」に答えたのか▼おそらく「ONE TEAM」ではない日本の現状と関係があるのだろう。分断や格差を持ち出すまでもなく、なにかにつけ、意見が対立し、いがみ合う時代である。協調、協力、一丸。そうしたものへの飢餓が「流行」の背景なのかと想像すれば少々寂しくもなる。

 

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