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【記者たちの胸ポケット】

刑事の論文/40センチの奮闘/永遠にきれいなママ

木原育子(37)社会部記者

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◆刑事の論文

 国会図書館は、私のささやかな息抜き場で、よく行く。もちろん昼寝のためではない。警視庁幹部の論文を読むためだ。

 ある時、小林敦・捜査一課長の論文を見つけた。十八年前に科学警察研究所にいた時に執筆されたもので、内容は捜査支援ソフトによる「犯人像推定」。

 鋭い分析も読み応え抜群だが、熱い言葉があちらこちらに。「99%の無駄とも思われる作業があってこそ、残された1%の中から真実が見えてくる」「現場の刑事が使えないシステムであれば、誰も使わなくなる」。熱のこもる組織と向き合いながら、私も日々を駆け回る。

◆40センチの奮闘

 昨年三月に警視庁担当となり、驚いたことの一つが庁内のコンビニで売られている生理用ナプキンの長さ。男性読者に説明すると、一般女性が昼間付ける長さは平均二十五センチだが、「四十センチ」に手を伸ばす女性が結構多い。張り込み、要人警護、尾行…。女性警察官の生理期間中に、そんな重要任務に当たることもある。

 奮闘の欠片(かけら)は、生活の片隅にチラリと見えるものだろう。庁内の女性警察官は一割弱。お買い上げしてさっそうと去っていく女性を応援している。

◆永遠にきれいなママ

 初任地の石川県で初めて書いた交通死亡事故の記事だった。

 車が電柱に衝突し、運転していた女性=当時(20)=が、頭を強く打ち亡くなった。女性は十七歳で結婚。四歳の長女、三歳の長男を保育園に送る途中だった。二人は軽傷。自宅には、生まれたばかりの次男もいた。

 何度か現場に通い、農家の人の目撃証言を得た。「お母さんが大破した車から、必死に子どもを降ろしていた」「子どもを抱っこして救急車をずっと待っていたよ」

 あの三人の子どもはどうしているだろう。先月、十二年ぶりに遺族に連絡を取った。子どもは女性の両親に育てられていた。当時も取材に応じてくれた両親が言う。「子どもも新聞が読める年ごろになった。少し前に読ませたよ」

 子どもたちは、母の最期の姿を記事で知り、涙をぽろぽろとこぼした。永遠にきれいなママの写真が載った新聞を、三人でぎゅっと抱き締めた。だから今、その記事はしわくちゃになっているという。

<木原育子(37)社会部記者> 愛知県出身。2007年入社。警視庁捜査1課担当。動物占いは「ゾウ」。昨春、ヨガのインストラクターの資格を取得。今夏は絵本を出版する予定で、肩書はやや多彩。

 

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