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【記者たちの胸ポケット】

迷惑施設?/遺影/ある無罪判決

山田祐一郎(38)社会部記者

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◆迷惑施設?

 「自分はできても文句はないが、あまり口には出せない」

 今も賛否が割れている東京都港区の児童相談所建設計画。現場となっている南青山で取材すると、住民の高齢男性は声をひそめた。五十年以上、地元で暮らすこの男性は「南青山はもともと小さな商店が多かった街。ブランドイメージというのは意識したことがないのだが…」と反対住民の意見に困惑する。

 「私は反対。怖いじゃない。できればない方がいい」。隣で聞いていた娘とみられる女性が“参戦”すると、男性は口をつぐんでしまった。施設ができるまでに、少しでも住民の理解が広がってくれることを願っている。

◆遺影

 司法担当だった昨年七月、オウム真理教元幹部の死刑囚十三人の刑が執行された。その数カ月前、元幹部の井上嘉浩元死刑囚=執行時(48)=を支援する女性に取材し、「最近の彼の姿を描いたらどうでしょう」と似顔絵を頼んでいた。「事件を反省している」という今の彼を知りたかったからだ。

 女性は将来への不安から宗教に救いを求め、僧侶になった。「自分もオウムに入っていれば事件に加担したかもしれない」。井上元死刑囚に自身を重ね、面会を続けていた。

 一カ月後、京都駅近くの喫茶店で女性にスケッチブックを見せてもらうと、「アーナンダ(教団内の宗教名)」ではない、五十歳を迎えようとする中年男性の顔があった。彼の今が感じられた。似顔絵は刑執行後、色が付けられ、遺影になった。

◆ある無罪判決

 つい先日、ずっと気になっていた取材相手から電話があった。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が国会で審議中だった二年前に取材した男性(62)だ。

 男性は名古屋市でマンション建設に反対する住民団体代表。現場監督を暴行したとして現行犯逮捕された。共謀罪が成立すれば、住民運動を理由に逮捕される懸念があるとして、男性のケースを紙面で取り上げた。

 名古屋地裁は昨年二月、防犯カメラ映像で暴行がないとして無罪を言い渡し、確定した。男性は「ほっとした」と電話口で漏らすが、反対運動の仲間は減った。有罪でなくても逮捕によって失ったものは小さくない。

<山田祐一郎(やまだ・ゆういちろう=38)社会部記者> 千葉県出身。2003年入社。港区や品川区、大田区を中心に都内ニュースを担当。趣味は音楽鑑賞。通勤中の電車内で洋楽を聴いて、気分を盛り上げる。

 

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