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【記者たちの胸ポケット】

先駆者/信頼関係/頭が古い?

森川清志(50)社会部記者

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◆先駆者

 東京都庁でこの春、議会広報の名物職員が定年を迎えた。山岸正幸さん(60)。職員生活三十七年で広報は延べ十五年、このうち議会広報を十年務めた。

 大学のサークルで広告を研究し、「広報の仕事がしたい」と入庁した。当時はまだ施策を丁寧に伝える雰囲気のなかった時代。「うそのない正確な広報を」と使命感に燃えた。

 議会広報は二〇〇五年から。都民やメディアの関心が高くない中で、「分かりにくい議会の動きをかみくだいて説明したい」と、時には自ら“取材”して情報提供に汗を流した。

 四月から再任用され、議会図書館で勤務。先駆者を訪ねると、本紙の大先輩を引き合いに「最近の記者はちょっとおとなしいかな」とハッパをかけられた。

◆信頼関係 

 「市場の危機管理はどうなってるんだ」。豊洲市場の建物地下に盛り土がない問題の発覚時、都中央卸売市場の広報だった鶴田勝さん(45)は、ある記者の言葉が胸に突き刺さった。都民からの批判や問題への対応に、同僚たちが歯を食いしばっているのを見るのはつらかった。

 取材対応に追われる中、広報の勉強をこつこつと始め、公益社団法人が認定する資格「PRプランナー」を取得。自治体職員の取得はまだ珍しい。経験と勉強から、大切なのは「信頼関係をつくる努力を惜しまない上で、正確に粘り強く説明すること」と学んだ。「コミュニケーションの大切さは、どんな仕事にも言えることでしょうが」

◆頭が古い? 

 「子どもが死なないと取り上げてくれないですよね」。都内の児童養護施設で暴言や暴力の虐待があったという問題の取材をしていた時、関係者からこう言われた。

 人が理不尽な理由で亡くなったら、「おかしい、おかしい」と目いっぱい騒ぐメディアでありたい。一方で、生死に関係なくつらい思いをしている人のことも丁寧に伝えたいと思う。

 施設での虐待問題は二月、紙面で大きく取り上げた。同僚は幼稚園児らの通園バスにシートベルトがない問題を取材。死亡事故でなくても課題を伝えた。

 先の関係者には「死ななくても伝えます」と言わなかった。紙面で姿勢を示せばいいと思ったからだけど、鶴田さんの教訓からみれば私の頭は古いかも?

<森川清志(もりかわ・きよし)(50)社会部記者> 大阪府出身。1994年入社。東京都庁担当。最近の趣味は自転車で、都内から宇都宮市まで1日で130キロを走破したのが自慢。大阪弁はほとんど忘れた。

 

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