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【記者たちの胸ポケット】

初めてのスター/歌舞伎の値段/RAILWAYS

酒井健(45)放送芸能部記者

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 地方支局から放送芸能部に着任して二カ月目の昨年九月。初めて会ったスターは、アニメ映画「ムタフカズ」で主人公の声を務めた草なぎ剛さんだった。

 インタビュー中に、ボールペンが出なくなった。コンビニで買った百数十円のペンだ。詰まったに違いない。焦る私を見た草なぎさんは「使うねー! 僕、ペン使い切ったことなんてないよ!」とすかさずフォロー。ペンはスタッフに借りて、事なきを得た。

 機転の利いたコミュニケーションに、柔らかな笑顔。人をリラックスさせる力。多くの舞台や司会で鍛えられてきたのだろう。こういう人が真のエンターテイナーなんだと感心した。

 帰社後にペンを開けてみたら、本当にインクを使い切っていた。記者人生でこんなことは初めてで、二度びっくりした。

◆歌舞伎の値段

 歌舞伎俳優の中村獅童さんが企画した「オフシアター歌舞伎」を見た。会場は東京・天王洲の倉庫と新宿のライブハウス。客席と舞台を近くし、身近な大衆娯楽だった江戸歌舞伎への原点回帰を目指す狙いだ。

 リングのように中央に設けられた舞台を、パイプ椅子の客席が囲む。役者の表情や息遣いがよく伝わり、近松門左衛門の名作「女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)」の物語もリアルに感じられて面白かった。

 ただ、チケットの方は庶民的とは言いがたい。新宿会場は一万一千五百円、東銀座の歌舞伎座は一万八千円の席が多い。見れば面白いだけに、年金に不安を感じる現役世代としては、価格面での工夫も期待したい。

◆RAILWAYS

 「人間はね。競争をしているようでいて、本当は皆、違うところを歩いているんですよ」

 三重県の小さな地方紙で働いていた駆け出しの頃、地元記者会と大手私鉄との懇親会に参加した。全国紙の記者たちの後ろで小さくなっていた私に、声を掛けてくれたのは、線路を保守する技術畑の部長さんだった。

 伊勢神宮にお参りに来る人は皆、違う願いを抱いて電車に乗る。夫婦円満、商売繁盛。同じ言葉でも、対象となる人や物事は違う。そんな意味だと思う。

 地方鉄道を舞台に、老若男女の交差する人生模様を描いた映画「RAILWAYS(レイルウェイズ)」シリーズの三作目「かぞくいろ」を見て、その言葉を思い出した。

<酒井健(さかい・けん)(45)> 神奈川県出身。2001年入社。放送芸能部で映画担当を経て、伝統芸能担当。大学時代はアジア・中東を一人旅。「空を見る」「海を眺める」「愛車で昼寝」が至福のひととき。

 

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