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【記者たちの胸ポケット】

新しい風/デリケートな話/助け求めても

太田理英子(33)千葉支局記者

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◆新しい風

 千葉県九十九里町の片貝海岸。来年夏、この砂浜を大勢の人が埋め尽くすかもしれない。

 「音楽フェスを企画する」。春に地元の高校一年の少年(16)にそう聞いた時、最初は正直、半信半疑だった。だがその計画は今、動きだしている。

 少子高齢化でさびれていく町に新しい風を吹かせたい−。少年が町長に手紙を送り、ツイッターで思いを発信すると、徐々に賛同者が広がった。先日、協力企業と初会合を開き、本格的に準備が始まったという。

 少年が思い描くのはひと夏の思い出ではなく、もっと先の未来。「地元の人にも町の魅力に気付いてほしい。いつかここを日本のカリフォルニアにしたいんです」。小さな町にどんな風が吹くのか、わくわくしている。

◆デリケートな話

 七月の参院選の際、改憲への考えを語ってくれる学生を探して大学関係者に当たったが、すべて断られた。理由は「改憲の話はデリケートだから」。

 ある教員は、過去に教え子がメディアで政治について発言した内容がネット上で炎上したと話し、「政治を考えるいい機会なのだけれど…」と萎縮する。別の教員は「どの大学も、教員の政治的発言に神経質。これでは学生が政策を批判的に見る能力が育たない」と嘆く。

 今の世の中に、異なる意見を受け止め合う土壌があるとは確かに言いづらい。それでも、はじめから大事な議題に「デリケート」とふたをしては、大人が若者を政治から遠ざけるだけだ。

◆助け求めても

 「見て見ぬふりは、虐待と同じぐらい傷つく」。東京都の男性(32)は、千葉県野田市で虐待死した女児と、かつての自身を重ね合わせた。「義父に殴られるよりも、母親が助けてくれなかったことがつらかった」

 担任に助けを求めても、威圧的な義父を前に沈黙。空腹時に手を差し伸べてくれる近所の大人が救いだった。「近くで誰かが見守っていると思えるだけで、耐えがたい時も生きられた」

 弁護士が学校の問題にかかわるスクールロイヤーの設置やアンケートの管理強化。野田市での事件後、行政は虐待対応の見直しを急ぐが、根本的な解決になるのだろうか。子どもたちは、自分を正面から受け止め、守ってくれようとする大人を待っているだけなのに。

<太田理英子(おおた・りえこ)(33)> 神奈川県出身。2013年入社。千葉支局で県警、司法を担当。学生時代は、民主化や格差是正を目指す先住民ゲリラに興味を抱き、メキシコに留学。趣味はベリーダンス。

 

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