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【記者たちの胸ポケット】

ベビーカー論争/私のものさし/君の名は

石原真樹(40)社会部記者

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◆ベビーカー論争

 自宅近くの保育所に入れず、ベビーカーで満員電車に乗らざるを得ないママの大変さを二月に報じた。子育てサイト「東京すくすく」に転載したところ、コメント欄に意見が相次ぎ、今も書き込みが続く。

 「母親のワガママ」など非難もあるが、優しさに救われたエピソード、殺人的な満員電車がおかしいとの指摘など、切り込む角度がさまざまで面白い。炎上ではなく、交通政策の改善や保育の充実など社会問題として議論する場になればと思う。

 一方で、幼稚園などの通園バスにシートベルトがない問題を取り上げた五月の記事にはコメントはわずかだった。取材日記までつけたのに。少し寂しい。

◆私のものさし

 一般会計予算が七兆四千六百億円。豊洲市場の借金三千七百億円。小池百合子知事発案の防災風呂敷二十万枚、三億円。東京都庁で仕事をしていると、金銭感覚がおかしくなりそうになる。そんなとき思い出すのが、東日本大震災で被災した宮城県山元町の臨時災害放送局「りんごラジオ」だ。

 惜しまれつつ二〇一七年に閉局。その三年ほど前、高橋厚局長(76)に「民間の支援がなくなっても、町の予算で放送を続けてはどうか」と尋ねたことがある。答えは「被災した人から集めた町税は、とても使えない」。予算は、被災者を含む人々から広く集めた税金。当たり前で大事なことを忘れていた。

 同局の運営費は年間千五百万円ほどで、それが私のものさしになっている。りんごラジオと比べてその事業の予算は適正か? 被災者が納めた税金を使うだけの価値があるか? と。

◆君の名は

 記者クラブのある都庁六階に警備員さんが立っている。顔ぶれは日替わりで皆にこやかだが、とりわけ丁寧な男性がいた。一歩後ろに下がり、笑みをたたえて「おつかれさまでございます」と深々とお辞儀。両手に荷物を提げて歩いていたら、先回りしてエレベーターのボタンを押してくれたこともある。せわしない日々の中で、その人とのあいさつはオアシスだった。

 そんな彼が最近見当たらない。少し前に一階で声をかけられたことがあったから、都庁のどこかで警備をしているのだろう。次に会ったら名前を聞いてみたいと思っている。

<石原真樹(いしはら・まき)(40)> 神奈川県出身。2003年入社。都庁担当。親子茶道歴7年。お茶がうまく泡立たなくても、子どものおしゃべりが止まらなくても、にこにこ受け止めるおおらかな先生は人生のお手本。

 

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