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【記者たちの胸ポケット】

元日の電話/超大盛り/忘れられない人

土門哲雄(45)社会部記者

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◆元日の電話

 紅白歌合戦を見た後、布団に入って寝ようとすると、元日早々、携帯電話が鳴った。警視庁の記者室で当直勤務に入っていた後輩から「原宿の竹下通りで車が暴走し、けが人が多数いるようです」との連絡だった。

 早速現場へ向かってもらい、担当記者は新年から取材に追われた。車の中から灯油入りのポリタンクと高圧洗浄機、着火装置が見つかった。容疑者は火炎放射器にして使おうとしたとみられ、背筋が寒くなった。

 天皇陛下の代替わりや来年の東京五輪で、警察はテロ対策に躍起だ。ひと昔前に比べ「働き方改革」は進んだが、警察と事件記者は、やはり「二十四時間営業」なのだと痛感した。

◆超大盛り

 東京・桜田門の警視庁本部で昼食、夕食を取る日が多い。自分もよく食べる方だが、警察官の食欲には驚かされる。

 庁舎一階にある食堂の定食類は、普通の店よりご飯の量が多い。そばやうどんは二人分注文する人をよく目にする。

 最上階のカフェテリアには「メガカツカレー」「ギガカレー」「テラカレー」というメニューがある。トレーのようなお皿に大盛りのカレーライス。さらに、豚カツ、ハンバーグ、スパゲティ、野菜類が「これでもか」と盛り付けられる。

 警視庁に通うようになり、カロリーと酒量が増えた。「原稿より健康」という先輩記者のアドバイスが頭をよぎる。

◆忘れられない人

 自分が三十代のころ、警察にTさんという幹部がいた。暴力団担当とは思えない穏やかな人柄で、口は堅かったが、丁寧に粘り強く取材に応じてくれた。

 そんなTさんから「出入り禁止」を言い渡された。容疑者逮捕を事前に報じた「前打ち」の代償。毅然(きぜん)とした口調の中、「仕方がなかったんでしょ?」と記者の立場を思いやる言葉もあった。他社との競争で成果を焦ったのかもしれない。申し訳なさに胸がつぶれそうだった。

 定年退職後、Tさんは病気で亡くなられた。ショックだった。斎場には多くの捜査員や記者が集まり、その人柄をしのんだ。事件の摘発だけでなく、「道を誤った人がやり直せる社会をつくることが大事だ」と話していた。事件の背景に目を向け、いつも優しさがにじんでいた。恥じない記者になりたい。

<土門哲雄(どもん・てつお)(45)> 東京都出身。1999年入社。警視庁キャップ。週末、愛車でショッピングモールに出掛けてストレスを解消。BGMは主に80〜90年代のヒット曲。ジョギングが苦手。

 

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