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【記者たちの胸ポケット】

身柄拘束/結愛ちゃん/山の声

小野沢健太(おのざわ・けんた)38歳 社会部記者

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◆身柄拘束

 今年一月、「カリスマ経営者」は手錠と腰縄をかけられ、東京地裁の法廷に姿を現した。会社に損害を与えたなどとして逮捕された日産自動車のカルロス・ゴーン前会長(65)。逮捕から五十一日ぶりの公の場で、勾留された理由の説明を受けた。ぶかぶかになったスーツと険しい目つきが、拘置所での暮らしの厳しさを物語っていた。

 二カ月後、起訴後に保釈されたゴーン被告は野球帽にジャンパー姿で街を歩いていた。別人のように穏やかな表情だった。

 「勾留中は不安に押しつぶされそうな毎日。刑が決まっていないのに実質的な刑罰だった」。容疑を否認して約百日間勾留されたことがある別の男性を取材したとき、ゴーン被告の表情が変わった意味が納得できた。

◆結愛ちゃん

 「会話したことがない」「見たこともない」。船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5つ)=を虐待死させたとする両親の公判前、東京都目黒区の自宅近くを歩いたが、生前の姿を知る人はいなかった。

 継父の雄大(ゆうだい)受刑者(34)は公判で「結愛の良いところも語りたい」と切り出し、結愛ちゃんが自分からトイレ掃除をして「おばあちゃんのまねをしているの」と楽しそうだったと明かした。母親の優里(ゆり)被告(27)=控訴中=も「おしりを見せて『おしりダンス』と踊ってくれた」。それを聞いた男性裁判員はがっくりとうなだれ、傍聴席からは無念のため息も聞こえた。

 軟禁状態にされた結愛ちゃんは「もうおねがい ゆるして」と書き残した。本来は明るくひょうきんなはずの子だった。

◆山の声

 六十三人が犠牲になった御嶽山(岐阜、長野県境)の噴火から九月末で五年となり、黙とうする登山者のニュースを見て、不思議な体験を思い出した。

 五年前、岐阜支社で県庁を担当していた。県の災害対策本部に詰め、現地に行けなかったことが心残りだった。噴火から二年後、山頂手前の当時の規制区域まで登り、手を合わせた。

 下山中に休むと、雨が降ってくる。仕方なく歩き出すと雨がやむ。止まると再び雨が降る。何度も繰り返してせかされるように下山すると、日没ぎりぎりだった。「早く帰れ。暗くなるぞ」と怒りの声を聞いた気がした。噴火のとき、山は何を思っていたのだろうか。

<小野沢健太(おのざわ・けんた)38歳> 東京都出身。2004年入社。司法担当。初任地の松本支局で魅力を知った登山が趣味。現担当になってからは、山にこもりたいと思いつつも、土すら踏まない毎日。

 

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