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【記者たちの胸ポケット】

虹色旋風/ピッピ/門出 

浅野有紀(31) さいたま支局記者 

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◆虹色旋風 

 埼玉県内の自治体で、ちょっとした変化が起きている。川越市の広報紙で性的マイノリティーの特集が組まれ、上尾市役所の窓口に性の多様性を表すレインボーフラッグが飾られた。当事者らでつくる「レインボーさいたまの会」の働き掛けだ。

 小さな変化でも、社会でつらい経験をした当事者にとっては「街に受け入れられた」という安心感につながるという。

 一方で、メンバーがある市議へ差別の現状を説明すると、心無い言葉を掛けられたことも。「国が指針を示すまで地方で動けない」という市議もいた。

 それでも「会い続ければ分かってもらえる」と、めげない。前向きな彼らの言葉に触れると、地方が国を変える日がそう遠くはないと思えてくる。

◆ピッピ 

 虐待などで家庭に居場所がない子どもを保護するシェルターが全国に広まっている。「埼玉にもあればいいのに」と県内の弁護士にぼやくと「ありますよ」と言われ、驚いた。

 過去の記事を見ると、弁護士らが立ち上げた「子どもセンター・ピッピ」が、職員不足で受け入れ停止とあった。代表の大倉浩弁護士に聞くと、シェルターを出た少女が「あまり話してくれる人がいなかった」と書き残した言葉が職員に重く響いたという。

 あれから一年。来年四月の再開を目指し奔走している。失礼ながら、諦めかけたこともあったか尋ねると「今日も女の子から『助けて』と電話があった。諦めるどころか早くしなきゃですよ」と言われ、はっとした。

◆門出 

 和光市の女性が都内で開いた児童虐待当事者が語る会。そこで出会った男性(35)は、誰からも見過ごされて大人になった。

 酒に酔うと暴力的な父。母は新興宗教に傾倒し、しつけと称した体罰が続いた。学校ではいじめ。生活相談ダイヤルや高校教師に渡した日記で訴えても「しつけが厳しいんだね」。それでも、妹を守るために生きた。当時、見上げた空は灰色に見えたという。

 妹が嫁ぎ、家族の知らない場所で再スタートを切りたいと願う男性から先月、メールが届いた。「無事、名前を変更し、名字も手続き中です」。もう誰にも左右されない人生に、たくさんの日が差しますように。

<あさの・ゆき> 岐阜県出身。2013年入社。埼玉県警・司法担当。学生時代は児童福祉を学びにスウェーデンへ留学した。取材先で歩き、レトロな喫茶店を見つけることが楽しみ。

 

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