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【私説・論説室から】

ツバメの子育て見守ろう

 「江戸時代の浮世絵に、人々のツバメへの愛情を感じさせる作品があるんですよ」

 日本野鳥の会の関祥子(さちこ)さん(45)に教わり、葛飾北斎の「十軒店雛市(じっけんだなひないち)」を見てみた。日本橋近くのにぎわいを描いているが、よく見ると商家の軒下に小さな巣が見つかる。

 興味深いのは、巣の下に支えるような板が設置してあることだ。落下防止用か。巣をかけやすくするためか。

 ツバメは天敵からひなを守るため、あえて人家に営巣する。江戸の昔から、人々はその子育てを応援していたのだ。なんだかうれしい気分になった。

 それから約二百年、日本に飛来するツバメは減っている。田んぼや草地が消え、餌の虫が捕れないせいという。加えて、野鳥の会の調査では、都市部で子育てに失敗した原因の10%は「人による巣の撤去」だった。周囲に落とすふんが「汚い」と嫌われる。

 人が味方から敵になりつつあるようで、胸が痛む。

 ふん対策なら方法があるのでは? わが家のご近所のマンションでは例年、一階の駐車場の梁(はり)に営巣するが、その下に工夫して傘を下向きに掛け、受け皿にしている。

 「幸福を招く」とされるツバメの巣。けなげに餌を運ぶ親鳥、元気に育つひなの姿は、何か尊いものを教えてくれる。それが幸福のヒントなのかもしれない。 (臼井康兆)

 

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