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【私説・論説室から】

介護家族の献身こそ

 「お母さんは、和子といるときがいちば〜ん楽しいんだ」。また始まったな、と思う。

 神奈川県内に住む和子さん(57)は介護が必要な母(83)と二人暮らし。身支度ができなかったり物忘れしたりにいら立ち、叱ることも多いが、母は少したつとケロッとして甘えてくる。幼児返りしていくような姿はたまらなくいとおしく、声を荒らげたのを悔やむ。

 三年前にはそんな悩みを抱くとは想像もできなかった。体調の急変で母が入院。敗血症や肝硬変と告げられ寝たきりになった。

 和子さんは毎日看病に通い、医食同源を信じて母の好物をせっせと食べさせた。肝機能障害は重く医師からは「退院したら七日ともたない」と言われたが、体を固定されての入院が続くのを見かね自宅介護に。以降、母は劇的に回復し八カ月後歩けるようになった。

 だが平穏が戻り、和子さんにはかえって強くなった不安がある。家計の破綻だ。母が倒れパートを減らした。今や亡父の遺族年金を含む母の年金が収入の大半。仕事は簡単には元に戻せず、いつかは訪れる母の死と同時に自身の生活は行き詰まる。心配は堂々巡り。

 最期まで自分らしく暮らす地域包括ケア、介護離職ゼロ…。国の掛け声は勇ましいが、最終的に高齢者の健康を支えるのは和子さんのような身内の献身だ。介護家族への現金給付など、政治は現実にもっと応えるべきではないか。 (白鳥龍也)

 

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