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【私説・論説室から】

さなぶり

 福島県三島町で奥会津書房という出版社を主宰している遠藤由美子さんから「さなぶり」を食べませんか、と誘われた。

 三島町までは東北新幹線の郡山駅で降り、磐越西線に乗り換えて会津若松駅から只見線に乗る。只見線は只見川に沿うように走り、沿線風景の美しさで知られる。

 「さなぶり」は早苗饗と書く。田植えを終えたお祝いだそうだ。

 一の膳には、ミズナのあえ物やシイタケの煮物、山椒(さんしょう)漬けのニシンなどが並んだ。二の膳には焼いた根曲がり竹があった。しばしば、採りに行った人がクマに襲われたとニュースになる、あの根曲がり竹である。

 かむと柔らかく、根元一センチほどまでおいしく食べられた。「採れたてだから。明日になったら食べられる部分は少しになる」と料理を作ってくれたおばちゃんが言う。産地で食べるのが一番おいしい。

 二〇一一年夏の新潟・福島豪雨で三つの鉄橋が流されて以来、只見線は一部区間が不通になっている。工事費の一部を地元が負担して二一年度の再開予定。「観光客へのもてなしに、さなぶりを」と考えているという。

 水害の一因は発電用ダムの放水ともいわれる。鉄路では遠いが、電気は首都圏にも送られている。申し訳ない気がするが、「来てくれるのが一番」とおばちゃんは言うんだろうな。 (井上能行)

 

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