東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 私説・論説室から > 記事

ここから本文

【私説・論説室から】

都会のアオダイショウ

 これは、東京都内の住宅街に立つマンションでの出来事だ。敷地内に体長二メートルほどのアオダイショウが出現した。それを近くで作業をしていたリフォーム業者が管理人と協力し、モップで押さえ付けて袋に押し込み、捕獲してしまった。

 問題は、ここからである。マンションの管理組合の理事長は、迷い込んできた生きものを何とかしてもらおうと保健所に相談した。すると「生きていれば警察へ。死んでいれば生ごみとして出してください」と言われ、引き取りを拒まれた。そこで今度は警察へ。答えはこうだった。

 「害獣ではないため、引き取っても逃がすことしかできない。ただ、このようなご時世なので、警官が住宅街でヘビを放つ動画をSNSで拡散されたら、何を言われるか分からない。申し訳ないけど、そちらで対応を」

 そもそもアオダイショウは東京都では絶滅危惧種に指定され、捕獲も禁じられているという。しかしマンション側としても、二メートルものヘビを公園や川に逃がそうものなら周囲の住民から苦情は必至。人里離れた山中に運ぶ人を募っても、気味が悪いと手を挙げない。

 「たかがヘビで大騒ぎか」と笑う人はいるだろう。だが、これが都会の現実だ。何重にも重ねた袋に入れられたアオダイショウは、今もマンションのゴミ集積所の建物の中で、静かに息づいている。 (鈴木遍理)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報