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【私説・論説室から】

クジラに感謝こそあれ

 キツネ色の衣をまとったフライが大盛りのキャベツの千切りと一緒に食卓に並んだ。

 「やった。今夜のおかずは豚カツだ!」

 喜んだのもつかの間、一口食べると独特の臭みが。「なーんだ。クジラか…」。子供のころ、幾度となく味わったがっかりである。 唐揚げ(竜田揚げ)といえばクジラ、ベーコンも白い脂身に赤い縁取りのクジラ。学生時代、下宿先に母から送られてくる食料の段ボール箱にはクジラの缶詰がどっさりと。仕方なく、カレーやチャーハンなど自炊料理には何でもこのクジラ肉を入れて作った。

 しかし、一九八〇年代から急速にクジラとの付き合いが減る。商業捕鯨から限定的な調査捕鯨へ−。となると、あの味が懐かしくなるものだが、捕鯨基地だった港町の土産物店などで見掛ける缶詰やベーコンの高いこと。

 以来三十年余。今月から商業捕鯨が再開された。が、素直には喜べない。牛や豚肉がふんだんに出回り、クジラの味を知らない世代が増えた今、誰が消費を支えるのか。国が定めた年間捕獲枠は調査捕鯨時より四割減。価格動向は不透明だ。国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退が国際協調に背くと、国内外から批判が続いているのにもモヤモヤ…。

 ただ、これだけは言える。今まで大病とは無縁の丈夫な体の基礎を作ってくれたのはクジラ。骨まで大切に利用する日本伝統の捕鯨文化は守ってゆきたい、と。 (白鳥龍也)

 

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