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【私説・論説室から】

ジャパンマネーの夢

 海外出張での失敗談はいくつもある。先輩記者は泊まったホテルの廊下の先にある非常口ドアから出ると、閉まって戻れなくなった。迫る締め切り時間。思い余って非常ベルを押したところ、拳銃を手にした警備員が何人も現れて「両手を上げろ」。

 大笑いしたが数年後、まさか自分が同じような目に遭うとは思わなかった。

 米国のショッピングセンター。好奇心にかられて押した観音開きのドアは戻れない仕組みだった。殺風景な通路に一人、どうすれば先輩のような大ごとにせずに戻れるか。

 落ち着けと思案しつつ、ドアのすきまを覗(のぞ)くと明るい店内は買い物客が行き交う。すぐ目の前を通り過ぎようとした銀髪の女性に意を決して叫んだ。「エクスキューズミー」。ドアを押し開いてくれた彼女の、私を見る怪訝(けげん)な顔といったら。

 海外に行く度に英語力の不足を痛感する。

 「円の国際化」が言われた時期があった。日本の経済力が米国を上回るのではないかと思われた一九八〇年代後半、ジャパンマネーは世界を席巻した。円はドルのように国際社会で通用するようになる。もしかしたら日本語も。でもバブル崩壊で夢物語に終わった。

 当分の間、世界通貨はドル、共通語は英語。円も日本語もますますローカルになるだろう。やっぱり英語か。人生百年、再挑戦してみようかな。 (安田英昭)

 

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