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【私説・論説室から】

元ビートルズの思い出

 ビートルズの超傑作アルバム「アビイ・ロード」が発売五十周年を迎えた。この名盤の録音に使用されたロンドンのアビイ・ロードスタジオを、二十一年前に取材した。

 「これは『レディ・マドンナ』で使われたピアノだ」「このマイクで『ラヴ・ミー・ドゥ』を録音した」。案内役の男性の説明を受けるたびに感動で頭がくらくらした。

 この取材に先立ち、リバプールで元ビートルズのドラマー、ピート・ベストをインタビューした。メジャーデビュー直前の一九六二年解雇されたリンゴ・スターの前任者だ。

 ピートはリバプールの職業安定所職員になった。「一日三食食べられない人がたくさんいたよ」。その頃、英国は「英国病」と呼ばれた大不況の真っただ中だった。

 ビートルズは六五年大英帝国勲章を授与された。外貨獲得に貢献したことが主な理由だ。ビートルズは衰退する英国経済にとって貴重な輸出コンテンツだったのだ。

 その後、ピートは職安を辞めほそぼそと音楽活動を再開した。サッチャー首相(当時)による改革で職場が民営化されたからだった。

 久しぶりにアビイ・ロードを聴き、スタジオ前の横断歩道を歩く四人を撮影した有名なジャケットを眺めた。「前から二番目の人物がリンゴではなくピートだったら」。再び彼に会い、世界を覆う格差について語り合いたいと思った。 (富田光)

 

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