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【私説・論説室から】

「もし・たら」を思う

 台風19号の被災者の労苦が続く。それには遠く及ばないが、台風通過時、筆者も東京都内の自治体避難所で事前避難を体験した。

 「(上陸台風の中では)過去最大だよ。怖い」。十一日、帰宅すると二十代の娘が深刻な顔をしている。先の台風15号の夜、木造の自宅三階にいて壁を揺るがす暴風に相当な恐怖を感じたらしい。徒歩圏の区立中高一貫校に避難所が開設されると知り「朝一番に行こう」と言う。大げさなとも思ったが、妻も賛成したため一家三人で出掛けることにした。

 十二日早朝、雨の中、学校に着くと何と一番乗り。避難所として、地下二階にある約百三十畳敷きの柔道場に案内された。

 隅に寝そべっているうち他の避難者が現れたが、集まったのは計二十人ほど。なぜかお年寄りや幼児の姿はなかった。職員は新品の毛布を配り、夕にはレトルトの混ぜご飯を温めて持ってきてくれた。スマホの充電器も備えられ困ることはない。夜に短時間、遠くに風の音が聞こえたが、ほかはいたって静か。

 暇に任せぐっすり昼寝をした。夜半には雨もやみ十六時間ぶりに帰宅。小枝や落ち葉が周囲に散乱していた以外、家も無事だった。

 だが、もし家が損壊していたら、避難所が満員だったら−。終わりが見えない時間、救援、支援をじっと待つことになったろう。今回は幸運だっただけ。「もし・たら」に思いを巡らす大切さを知った。 (白鳥龍也)

 

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