東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 私説・論説室から > 記事

ここから本文

【私説・論説室から】

キルギスの少女の涙

 政治家たちに笑われたことがよほどショックだったのだろう。小学五年生の少女は一瞬黙り込んだ後、声を上げて泣きだした。

 中央アジアのキルギスの議会が、国中から子どもたちを議場に招待した。二千人以上が学ぶ学校からやって来たその少女は、学校には看護師が一人しかおらず、その看護師がお金をとって子どもたちに予防接種をすると訴えた。これを聞いて議員たちが笑ったのだ。

 少女の学校の校長によると、衛生当局から支給された破傷風とジフテリアのワクチンが必要数に足りなかった。このため看護師が児童の父母と相談したうえで不足分を薬局に買いに行き子どもたちに接種した。看護師が徴収したお金はその代金だったという。

 キルギスは日本の半分ほどの領土に、千葉県とほぼ同じ六百万余の国民が暮らす。一人当たりの国内総生産(GDP)を比較すると、日本の3%程度しかない。

 キルギスで存在感を増しているのは、隣国の中国だ。中国からの借り入れは対外債務の四割ほどを占めるとされ、「債務のわな」にはまりかねない。こうした窮状の一方で腐敗は頭の痛い問題になっている。

 議員たちは何がおかしかったのか。国が貧しくても、子どもの健康にかかわる政策は優先されるべきだ。公衆衛生のお粗末ぶりを放置しているのは政治の怠慢である。自分たちのことこそ自嘲すべきだ。 (青木 睦)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報