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【私説・論説室から】

博士の来る町

 行こうか、行くまいか、迷っている。

 京大、横浜国大、新潟大、滋賀県立琵琶湖博物館などの研究者による学術調査研究成果発表会である。内容はすばらしいのだが、場所が、福島県只見町なのだ。二十六日午後一時に始まる発表会を聞くには、東京駅午前六時発の上越新幹線に乗り、上越線、只見線と乗り継がなければならない。

 只見町はブナ林に囲まれた美しい町だ。「自然首都・只見」をキャッチフレーズにしている。発表はすべて同町が助成金を出した研究の成果である。助成金は一件五十万円以内で、総額二百五十万円。豊かな自然と助成金が若手研究者を引きつけている。

 きっかけはブナ林の保護活動だった。京大の河野昭一教授らが調査に入った結果、ブナだけでなく、希少動植物がいることや江戸時代以前からの古文書が残っていることも明らかになった。町から見える山肌は、雪崩が削ってできた珍しい雪食地形と分かった。二〇一二年度から助成金制度を始めた。研究成果は、町民がふるさとの良さを見直す契機になった。一四年にはユネスコ(国連教育科学文化機関)エコパークにも指定された。

 「米百俵」で知られる新潟県の長岡藩とも縁がある。二百五十万円の研究助成金に、その精神が引き継がれている気がした。博士の来る町はいつの日か、博士の住む町に変わるかもしれない。 (井上能行)

 

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