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バナナをくわえたその意味は 民主化30年、ポーランドの女性作家が描く「しなやかな闘い」 東京都写真美術館で

ナタリア・LL(ラフ=ラホヴィチ)《消費者アート》1972年 写真パネル (C)Natalia LL/Courtesy of lokal_30Gallery, Warsaw

写真

 意味ありげにバナナをくわえる女性の写真はスキャンダラスなのか―。東京都写真美術館で、「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像」展が十四日まで開かれている。今年は日本とポーランドの国交樹立百周年、ベルリンの壁崩壊でポーランドが民主化して三十年。同展にはこれまで十分語られなかった一九七〇年代から現在までの映像作品が並び、静かな人気を呼んでいる。(出田阿生)

◆男性向けポルノと思いきや…

 会場を入ってすぐ、冷戦下の共産圏を生きたパイオニア世代の展示で目を引くのが、ナタリア・LLの作品。映像作品の〈インプレッションズ〉(七三年)は、若い女性の裸の上半身が、官能的にうごめく様子が映される。〈消費者アート〉と題した作品は、バナナを食べる女性の写真だ。

 一瞬、男性向けポルノかと勘違いしかけるが…。ヌードの映像は作家の自撮り。女性が性を謳歌することをタブーとする、当時の既成概念を揺さぶったことは想像に難くない。バナナの方は、性的な連想をさせるとともに「消費の喜び」を描く。共産主義下で、バナナは高価な果物だった。時代や社会背景によって、作品の意味が全く異なる。見る側の内面があぶり出されるようでドキリとする。

 岡村恵子学芸員は「ポーランドはカトリックが九割を占める父権社会。女性は、自己犠牲で国や家族を支えることが理想とされた。そのなかで作家は、規範に則った女性像の対極をあえて提示した」と解説する。

◆殴り合う男女、若い女性のお面で戦闘

 現代に近づくと多様性が増す。ズザンナ・ヤニン〈闘い〉(二〇〇一年)は、リングで延々と男女が殴り合う映像。ポーランドで有名なヘビー級プロボクサーに、華奢なヤニンが勝ち目のない闘いを挑んでいる。その力と体格差に恐怖さえ覚え、目が離せない。作家は結婚生活での夫との確執をイメージしたという。

 カタジナ・コズィラ〈罪と罰〉(〇二年)は、大量の火器を使う疑似戦闘を楽しむ男性らを撮影した。マシンガンの連射音、爆発のごう音…。それを怖い、嫌だと思うか、興奮や快楽を感じるか。観客も疑似体験する。男性たちは若い女性のお面をかぶっておりグロテスクさを増している。

 岡村学芸員は「どの作品もただ批判性を打ち出すのではなく、抽象表現の美学に則っている。時にユーモアもある。時代が変わっても、自分なりの表現を見つけようとする作家の健全さを感じられる」と話す。

(10月3日付東京新聞夕刊文化面に掲載)

 

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