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【経済Q&A】

1月勤労統計 給与総額1年半ぶり減 実態とずれ信頼薄く

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 厚生労働省は五日、毎月勤労統計の一月確報を発表しました。基本給や一時金などを含めた現金給与総額の確報が前年同月比0・6%減の二十七万二千百三十円と、一年半ぶりのマイナスに転じました。ところが実態に近いとされる「参考値」は0・6%増とプラスで食い違います。実態とかけ離れ信頼性が薄れたままの毎月勤労統計の問題点を整理しました。 (渥美龍太)

 Q なぜ伸び率がマイナスに転じたのですか。

 A 経済実体よりむしろ統計手法に原因があります。勤労統計は、賃金を聞き取る企業を定期的に入れ替えています。ずっと一緒の事業所だと競争に生き残った強い企業の割合が増えるなど、平均からずれてしまうためです。一月確報の段階で入れ替えた際、競争力や賃金も低い事業所が入るなどして、経済情勢とは関係なく伸び率が落ちたとみられます。以前はそうした場合、過去の数値も補正することで、連続性を持たせ過去と比較した伸び率の算出ができるようにしていました。

 Q いまは手法を変えたの?

 A 政府は一八年から「過去の数字が変わる統計は分かりにくい」と称して、この補正を停止してしまったのです。このため、企業入れ替えの影響がもろに出ているのです。さらに前年の一八年の伸び率がかさ上げされているため、賃金の伸びの勢いが急に落ちたように見えます。

 Q 一八年がかさ上げされているとは?

 A 世の中の変化を反映して大企業の割合を引き上げる統計上の処理をしたため、賃金の伸びが強く出るようになったのです。これについても数値の補正を停止したため、表面上、賃金が大幅に伸びる結果となりました。閣僚らが補正をする従来の統計方法を批判していた経緯から、野党は「官僚が忖度(そんたく)して賃金が上がるように偽装した」などと追及しています。

 Q 統計が実態とかけ離れていたら役に立たないのでは?

 A 閣僚の要求で補正をやめたことで、企業入れ替えや統計処理のたびに賃金が大きくぶれ、「統計の信頼性を失った」と言い切るエコノミストもいます。政府は調査対象事業所など算出方法を前年とそろえた値を「参考値」として公表しています。一九年一月は公表値はマイナスですが参考値ではプラス。一八年六月の伸び率は2・8%増が1・4%増に半減します。こちらの方が実態を表しています。

 さらに問題は情報公開の姿勢です。一九年は公表文の表紙で算出変更により下振れした点を明記。本来はもっと高い数字であることを強調しています。これに対して、一八年は統計手法の変更で上振れしたのに、公表文でこの点をよく説明していません。統計の利用者や国民にとって誠実な対応とはいえません。

 

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