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【経済Q&A】

2月月例報告 ナゼGDPマイナスなのに「緩やかに回復」

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 内閣府は二十日、二月の月例経済報告を発表し、国内景気の判断を「緩やかに回復している」と据え置いた。だが、十七日に発表された二〇一九年十〜十二月期の国内総生産(GDP)はマイナス成長に沈むなど、経済指標と政府の見解が食い違う状況が続いている。新型コロナウイルスによる肺炎(COVID(コビッド)19)の感染も拡大する中、市場関係者からは、景気は既に後退局面に入ったとの見方もくすぶる。 (大島宏一郎)

 「緩やかに回復」との表現は、一八年一月から二年以上続く。今回は新型肺炎の影響に「注意する」との文言を盛り込んだが、個人消費は「持ち直している」、生産は「引き続き弱含んでいる」などと主要な項目の判断は据え置き、景気全体の見解も変えなかった。西村康稔(やすとし)経済再生担当相は記者会見で「有効求人倍率など雇用は改善している」と説明した。

 一方、最近の経済指標は悪化が目立っており、政府見解とのずれが生じている。一九年十〜十二月期の実質GDPは、消費税増税の影響で一年三カ月(五・四半期)ぶりのマイナス成長に転じた。製造業の指標などから機械的にはじく同年十二月の景気動向指数も五カ月連続の「悪化」で、「景気はピークを越えた」(みずほ証券の末広徹氏)との見方が上がる。新型肺炎の悪影響で先行きへの不安も増し、エコノミストの間では、次期GDPもマイナスに陥るとの推測もある。第一生命経済研究所の新家(しんけ)義貴氏は、中国にある工場の生産が停止している点を理由に挙げ「日本からの輸出減などがGDPを押し下げる」と指摘。「既に後退している景気を下押しする恐れがある」と懸念する。

◆「実は後退」後で判明も

 各種の経済指標は悪化が目立つのに、政府が毎月の月例経済報告で示す景気についての公式見解は「緩やかに回復」から変えていません。なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか。 (渥美龍太)

 Q 月例経済報告とは、どんなものですか。

 A 政府が毎月、幅広い経済指標や企業からの聞き取り調査を基に、国内と世界の経済情勢をまとめる報告書です。ただ、「指標がこの状況ならこの表現にする」といった基準がなく、政府の裁量で決められる余地があります。

 Q 悪化が相次ぐ経済指標と食い違うのはなぜですか。

 A 例えば、七日に発表された昨年十二月の景気動向指数は、リーマン・ショック以来となる五カ月連続の「悪化」でした。この統計は経済指標から機械的にはじき出すため、月例経済報告と違って政府が裁量を差し挟むことができず、食い違います。ちなみに安倍政権以前は、動向指数が「悪化」となった時は、いずれも専門家の事後検証で景気が後退していたと公式に認定されています。

 Q では、政府が「回復」と言っている裏で「実は景気後退していた」ということがあるのですか。

 A ありえます。しかし、政府は月例経済報告で景気の方向を上向きから下向きに変えるのに極めて慎重です。旧経済企画庁(現内閣府)で実務に携わった大正大学の小峰隆夫教授は「自ら悪化の情報を出すと、さらに状況が悪化しかねないから」と説明します。政治的にも「戦後最長の景気拡大」をアピールしており、回復という言葉は簡単には消せない存在になっているのです。

 Q 新型肺炎の問題もあり、「回復」という政府見解には違和感があります。

 A 民間エコノミストの間でも景気への見方は割れていますが、悲観論は強まっています。小峰氏は「月例でも『回復』はやめて、悪化の方向に表現を切り替えた方がいい」と話しています。

 

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