東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

リーマン・ショック10年の今 地方の時代確信 町おこしへ

写真

◆元リーマン社員・真鍋邦大さん

 「疲れ果てた都会より、田舎の方が笑顔の人が多いじゃないか」

 二〇〇八年十二月、勤務先のリーマン・ブラザーズが破綻し、職を失ったばかりの真鍋邦大(くにひろ)さん(40)=写真=は実家の香川県多度津町に身を寄せていた。次の職探しに向けた一カ月間の一時的な滞在だった。

 景気は悪いが、街には笑顔があった。地方は疲弊して元気がない、という思い込みを改めた。その気付きが後の転機となった。

 地元の高校を卒業後、東大へ進学し、〇五年四月にリーマンに入社した。「外資系なら仕事が厳しい分、早く一人前になれる」。花形の債券トレーダーや、証券販売の営業を経験。入社四年目を迎え、仕事にやりがいを感じ始めていたころ会社は消えた。

 再び東京で別の外資系金融に勤めたが、「あの一カ月の田舎暮らしが頭の片隅にあった」。そこへ一一年三月十一日、東日本大震災が起きる。原発事故も重なり、「人々の優先順位が、お金や経済から安全や食の確保に移る。地方の時代が来る」。そう確信し、地方移住を決意した。

 一二年一月、香川県の小豆島へ渡り、町おこしの会社を一人で立ち上げた。島は豊かな食や伝統があるのに少子高齢化が進み、過疎化が止まらない。「社会問題の縮図でもある小豆島を元気にできれば、地域社会を盛り上げるモデルができるのでは」と考えた。

 仲間を募り、瀬戸内海の名産品であるそうめんや落花生などをポン菓子にして販売。生産者の顔が見えるカタログギフトをつくり、全国に島の魅力を発信した。活動を通じて、四国に戻る若者も出てきた。

 一七年からは子どもが生まれたのを機に、妻の実家に近い兵庫県三田市に引っ越した。「丹波の黒豆」で知られる同県篠山(ささやま)市で、地域おこしの起業家を育成する仕事を始めた。

 「田舎の人はアイデアや思いを持っている。大事なのは、人と人をつなぐ場をつくること」。地方の豊かな可能性をこれからも発信するつもりだ。 (岸本拓也)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報