東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

緩和策の反動 新興国へ リーマン・ショック10年

写真

 世界的な金融危機の引き金となった米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻から十五日で十年となる。ショックを機に、急激な景気悪化を食い止めるため各国は財政支出や金融緩和など政策を総動員した。震源地の米国経済は立ち直り、日本を除く欧米の中央銀行は政策の正常化へ踏み出したが、大規模な金融緩和による反動が今、新興国経済を揺らす。世界経済も日本経済もリーマン・ショックの影響から、いまだ脱し切れていない。 (岸本拓也)

■膨 張

 「国際金融市場は、危機前の活況を取り戻した」。今月三日、日銀の黒田東彦総裁は講演で強調した。

 リーマン・ショック後、日米欧の中央銀行は経済の落ち込みに対処するため、政策金利を引き下げた。しかし、金利がゼロに近づき、これ以上の引き下げが厳しくなると、各中銀は「量的緩和」と呼ばれる金融政策へかじを切り始めた。

 量的緩和は、中央銀行が金融機関から国債などの資産を大量に買う政策だ。買い取り資金が金融機関に流れ、企業や個人への貸し出しや投資へと広がる効果を狙う。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が二〇〇八年十一月から始めた。その後、日銀や欧州中央銀行(ECB)も追随した。その結果、先進国の中央銀行の保有する国債などの資産はこの十年で激増。ECBは三倍、FRBは四・六倍、日銀は四・九倍−。日本円で総額千六百兆円と空前の規模に膨らんだ。

■出 口

 非常時を脱した米欧は、金融政策を平時へと戻す正常化へと動きだした。

 「金融危機の影響は緩やかに後退している。資産の縮小を目指す」。一四年九月、FRBのイエレン議長(当時)は量的緩和の終了を宣言し、一五年十二月には利上げに踏み切った。ECBも資産の購入額を段階的に減らしながら、一八年内に量的緩和を打ち切る方針を示している。

 対照的に、周回遅れの日銀は泥沼状態にある。脱デフレを掲げる安倍晋三首相の意向をくんだ黒田総裁は一三年四月、「異次元」の緩和策を打ち出した。一時は年間八十兆円のペースで国債を買い、いまや日銀の資産は五百五十兆円超。日本の名目国内総生産(GDP)に匹敵する規模だ。

 だが、黒田総裁が当初二年で達成する想定だった「2%の物価上昇」は見通せず、非常時の異例な政策だったはずの大量緩和は「長期化せざるをえない」(日銀幹部)状況だ。日銀が保有する国債は、国債発行残高の四割超を占める。巨額の国債を抱え込み、将来の金利上昇時に日銀が大きな損失を抱えるリスクを膨らませている。

■火 種

 各国中銀の緩和策で市場にあふれた大量のお金は、成長の見込める新興国へと向かった。新興国の政府や企業は積極的にこのお金を借りて、公共事業や開発を進めた。

写真

 国際金融協会(ワシントン)の調査では、一八年三月末の新興国全体の債務残高は六十八兆九千億ドル(約七千六百八十兆円)とこの十年で三倍にもなった。しかし、米国が利上げ局面に入り、リスクの少ない米国への投資の魅力が増すと、お金が新興国から米国へと逆流し始めた。

 今年に入り、アルゼンチンやトルコ、ブラジルなどから投資のお金が流出し、対ドルで大幅な通貨安に見舞われている。債務の膨らんだ新興国では通貨安によって返済の負担が拡大し、経済が不安定になりかねない。

 明治安田生命の小玉祐一チーフエコノミストは「米国の政策転換と共に、新興国バブルが崩壊に向かう過程にある」と指摘。先進国の金融緩和で膨張したマネーの動きが、新たな混乱の火種となっている。

<リーマン・ショック> 2008年9月15日の米大手投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻に端を発した世界的な金融危機。米住宅バブルの崩壊で、低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)が焦げ付き、多額の不良債権を抱え、リーマンは破綻した。この影響で金融機関が互いを信用できなくなり、金融市場がマヒ。米国を中心に消費や投資が急減し、世界同時不況を引き起こした。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報