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【経済】

日本車メーカー負担増 北米供給網に影響

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 トランプ米政権は三十日、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を進めていたカナダと合意した。カナダに自動車の輸出数量を規制する措置を受け入れさせたトランプ政権。この数量規制は管理貿易につながりかねない強硬な手段で、日本の自動車メーカーへの影響は避けられない。今後米国との二国間協議を控える日本も同様の要求にさらされる公算が大きい。 (森本智之、杉藤貴浩、ワシントン・白石亘)

■脅し

 「自動車の輸出を制限するいかなる措置も受け入れるのは完全な誤りだ」

 ロイター通信は三十日、米国との交渉に精通したカナダ側関係者が懸念する声を伝えた。それでも結局、カナダが米国に押し込まれたのは、輸入車への25%の追加関税の脅しに屈したためだ。

 北米は経済統合が進み、国境をまたいで自動車のサプライチェーン(部品の供給網)が張り巡らされている。カナダは米国への自動車の一大輸出国で、仮に車関税が発動されれば経済に甚大な影響が出る。カナダ紙のグローブ・アンド・メールは「交渉の最終段階では、米国が要求するカナダ製自動車の数量規制に議論が集中した」と報じた。

 米通商代表部(USTR)によると、カナダは輸入車関税を課されない保証を得る代わりに、現在の対米輸出台数である年約二百万台を上回る年二百六十万台の数量規制を受け入れた。トランプ政権はメキシコにも、年二百六十万台(現行年約百八十万台)の数量規制をのませている。

■加速

 日本自動車工業会の豊田章男会長は九月二十日の会見で「北米でのビジネスはNAFTAを前提にしている」と話した。昨年、メキシコでは四社が約百三十七万台を、カナダでは二社が約百万台を生産し、多くを米国へ輸出した。

 みずほ総合研究所の西川珠子氏は「数量規制によって、カナダやメキシコへの新規の投資はしにくくなる。メーカーへのインパクトは大きい」と指摘する。自動車メーカーにとって、部品調達率や賃金基準を満たそうとするとおのずと米国寄りに生産体制がシフトすることになる。数量規制はさらにその勢いを加速させかねない。

 米国シフトを進めるには、日本産の部品を米国産に切り替える必要がある。そうなれば、日本の部品メーカーは日本国内の生産を減らすことになりかねない。

 トヨタ系部品メーカー幹部は「日本国内の開発する力は維持しておく必要がある。現地生産比率の向上と国内生産体制維持のバランスが難しい」と話した。

■反発

 日本は二十六日、米国と日米物品貿易協定(TAG)の交渉入りで合意したばかりだが、米国の対日貿易赤字の七割は自動車が占める。米国との交渉責任者を務める茂木敏充経済再生担当相は二十六日のニューヨークでの記者会見で、これまでの米国との協議では数量規制の議論は出ていないとした。その上で「日本は自由貿易の旗手として管理貿易につながりかねない措置については反対だ」と語気を強めた。

◆自由化後退 日本にリスク

 羽生田慶介・経産省の元FTA交渉官(現・デロイトトーマツコンサルティング執行役員)の話 自由化を後退させる貿易協定が、これだけ大規模に結ばれるのは戦後初めての事態だ。自動車が基幹産業である日本は、現状維持ではこれまでの低い関税率を享受できないリスクに直面することになった。

 輸入数量の制限は日本企業にとって、長期的な生産計画に影響を与える。メキシコやカナダの工場の増強は慎重にならざるをえない。人件費の高い米国での生産強化もコスト上昇の要因となる。

 域内の部品調達率の引き上げは、日本から部品を輸出している下請けの企業にとって受注が減る懸念がある。日本企業のメキシコ工場は条件を満たすことができない可能性があり、生産体制を見直すか高関税を受け入れるかの選択を迫られることになる。

 

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